- 作者: 三国ハヂメ
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2009/11/18
- メディア: コミック
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愛も官能もばっちりの大団円
名門女子校の寮「はらいそ館」を舞台に繰り広げられる、小鞠と雪緒のラブストーリー最終巻。面白かったです! 雪緒のお家がふたりを引き離そうとするところまでは予想通りでしたが、一連の流れに予想外のひねりがくわえられており、楽しく読みました。ありがちな「メインカップルが困難に打ち勝って愛を成就させる話」ではなく、「氷のお姫様の氷が愛によって溶かされる話」であるところがとても新鮮。その氷を溶かす愛が、あったかくて可愛くて、かつ奥が深いので、見ていてとても楽しかったです。いつもながら巧みな官能描写もよかった!
お家騒動と、予想外のひねりについて
姫宮家がメインカップルの関係に割り込んでくるところまでは予測済みでしたが、そこで「女の子同士なんて!」みたいな同性愛嫌悪チックな文言がひとつも出てこないところが新鮮でした。雪緒の母がふたりを引き離そうとするのは、あくまで跡継ぎに虫がつくのを嫌うがゆえであり、女のコ同士だからではないんです。
もうひとつ面白いと思ったのが、お話が「小鞠のロマンティック・ラブが冷酷な姫宮家から雪緒を救いました」という構造にはなっていないこと。確かに小鞠の愛と献身によって雪緒は救われるのですが、実はお家騒動そのものは小鞠の力ではなく、雪緒の伯母によってデウス・エクス・マキナ的に解決されてしまいます。また、雪緒を救う愛は小鞠のものだけではなく、はらいそ館の面々や、それに実は姫様を慕っていた姫宮家のメイドさんたちの気持ちもひっくるめた大きな愛だったりします。
まとめると、このお話って、「女のコ同士は差別されるけど、ロマンティック・ラブの力ですべて乗りこえました!」みたいな紋切り型の筋立てとはまったく違うところにあると思うんですよ。これは要するに人間不信だった雪緒の心が愛によって温められ救済されるお話であって、その愛の枠組みもとても大きく、かつ広いんです。もちろんその中でも小鞠との恋愛はひときわ重要なもので、それがラブラブハッピーエンディングへとつながっていくのですが、一対一のその関係だけを称揚して終わりのお話でないところがとてもよかった。あたたかくて懐の深い、すばらしい最終巻だったと思います。
官能描写について
完結を機に1巻から全部読み返してみたのですが、さてもさても、繊細でおいしそうな官能描写をよくぞここまで詰め込んだものだと感じ入ります。
まず繊細さについて言うと、体位にわざとらしさがないのが素晴らしい。セックス下手なヘテロ男子またはバリタチさんが好みそうな「パーツとパーツの接触」に拘泥した描写ではなく、女のコ同士の柔らかな皮膚と皮膚の接触感をきわめて大切に扱うエロ表現なんですよね。早い話が、アクロバティックな貝合わせだのシックスナインだのを登場させず、抱きしめた体と体の密着感とか、つながる手と手の感触とか、おなかや背中や太腿や指その他(要するに体中)へのキスおよび愛撫とかを丁寧に見せていくという描き方であって、即物的なポルノよりよほどエロティックなんです。もちろん局部への刺激もしっかり描かれるんですが、決してそれ「だけ」にはとどまらないところがポイント。また、単にソフトなだけではなく、たとえば舌で愛撫しながら軽く歯を立てる描写なんかがさりげなく織り交ぜてあるところもポイント。痒いところに手が届く、いやらしくてみずみずしい官能表現だと思います。
次に「おいしそう」という面に関しては、何はさておき小鞠のおっぱいに注目。雪緒にもみしだかれるそれの柔らかさといい、適度な大きさといい、なんとえっちなことか。エロ漫画にありがちな、誇張されまくった記号としての乳ではなくて、もっと身近で生身な「女のコのおっぱい」だと思うんですよね、あれ。よく、「おっぱいの柔らかさは時速何十キロで走る車の窓から手を出したときの空気抵抗ぐらい」とか「二の腕の柔らかさぐらい」なんてことを耳にしますが、それって全部間違っていて、おっぱいの感触はやはり真正のおっぱいにしか存在しないものだと思います。『極上ドロップス』がすごいのは、その感触をみごとに紙の上に再現してみせた点です。車から手を出したり人の二の腕を揉んだりするより、この漫画を読んだほうがよっぽど女体の甘い手ごたえを感じ取れるんじゃないでしょうか。
まとめ
えっちで可愛くて愛もばっちり、しかも恋愛至上主義を超えたもっと大きな「愛」が描かれているという、大満足の最終巻でした。読んでいてほかほかと心があたたかくなりました。同性愛嫌悪を安直に恋のハードルに据えないところもよかった。1〜2巻と合わせて、すごくおすすめです。