石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

FacebookがLGBTコミュニティーに謝罪 「実名主義の扱い変える」

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さようならFacebook、こんにちはEllo。ゲイのユーザが新SNSに大移動中」の続報。ユーザの大量流出を受け、Facebookの最高製品責任者(CPO)がLGBTコミュニティーに謝罪し、実名主義の取り扱いを変えると発表しました

詳細は以下。

Facebook Apologizes To LGBT Community, Promises Changes To "Real Names" Policy

Facebookの最高製品責任者、クリス・コックス(Chris Cox)氏は、2014年10月1日(現地時間)、自身のFacebookで以下のような声明を発表しています。

Facebookアカウントの取り扱いを通じてここ数週間でわたしたちがみなさんに経験させてしまった苦痛な状態に関して、影響を受けたドラァグクイーン、ドラァグキング、トランスジェンダー、わたしたちの友達や隣人たちの広範なコミュニティー、そしてLGBTコミュニティーの方々に謝罪したいと思います。

実名問題が表面化してからの2週間で、これらのコミュニティーのたくさんの方々からお話を伺い、みなさんが体験されたのと同じぐらいはっきりとこのポリシーについて理解する機会が持てました。わたしたちはまた、これがいかに苦痛を与えるものであったのか理解するに至りました。Facebookは、あなたがたによりよいサービスと、Facebookを使うことで得られるよりよい体験を提供しなければなりません。影響を受けた人全員がFacebookに戻って来られるよう、わたしたちはこのポリシーの取り扱いを修正する予定です。

I want to apologize to the affected community of drag queens, drag kings, transgender, and extensive community of our friends, neighbors, and members of the LGBT community for the hardship that we've put you through in dealing with your Facebook accounts over the past few weeks.

In the two weeks since the real-name policy issues surfaced, we've had the chance to hear from many of you in these communities and understand the policy more clearly as you experience it. We've also come to understand how painful this has been. We owe you a better service and a better experience using Facebook, and we're going to fix the way this policy gets handled so everyone affected here can go back to using Facebook as you were.

Facebookは2014年9月、ドラァグクイーンのユーザたちに「本名で登録しなければアカウント停止」と迫り、LGBTコミュニティから大きく反発されていました。だってこれ、ドラァグだけの問題じゃありませんからね。たとえばトランスジェンダーの人なども、一律に法律上の名前を使うよう強制されたら、社会生活が危険にさらされる可能性がありますし。(2014年10月3日追記:Facebook、同性愛が違法とされる国でも実名主義を押し通していたらしいです。エジプトではそれで当局にみつかり、懲役刑となった人が6人います)

シスター・ローマ(Sister Roma)ル・ポール(Ru Paul)など著名ドラァグクイーンたちからの批判もあって、この問題は一気に世に知られることに。Facebookに愛想を尽かしたLGBTユーザは、「実名不要」「ユーザの個人データを第三者に売らない」「広告なし」という、Facebookとは正反対のポリシーを掲げる新興SNS「Ello」へと続々と移動してたんでした。

Elloはここ1週間でものすごい勢いでユーザを増やしており、ザ・ガーディアンによれば、招待申請の件数は1時間あたり35000件にも達しているそうです。個人的には「Google+が実名主義をやめてもなおポリシーを変えないぐらいだから、Facebookにとってはこれぐらい覚悟の上なんじゃないの」と思ってたんですが、急遽こういう声明が出てくるということは、さすがにこれだけの大流出は痛かったと見えますね。

前述のコックス氏の声明によれば、Facebookは今回の件を通じて「通報と強制執行のメカニズム、誰が本物で誰が偽物なのかを見分けるツール、影響を受けたユーザのためのカスタマーサービス」などに改善の余地があると知ったとのこと。ただ、ここで注意しなくてはいけないのは、この「改善」のために具体的に何をどうするかという約束はひとつもしてないんですね、この声明文。むしろ文章の中盤では、こんな風な趣旨の言い訳も羅列されてたりします(以下、意訳よ)。

  • 今回のドラァグ狩りは1ユーザからの通報によるもの。(だからFacebookのせいじゃないよ!)
  • 偽名アカウントの99パーセントはなりすましやいじめや荒しやヘイトスピーチに使われるものだし、いつもと同じ手続きをしただけ。(だからFacebookは悪くないよ!)
  • 実名主義があるからこそFacebookは特別なんだよ。(人は偽名に隠れて悪をはたらくんだよ!)

そんなわけで、単にCPOが謝罪したというだけで諸手を挙げて喜ぶのはまだ早そうな気がします。大きな一歩ではあるけれども、もう少し様子見かなー。