石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

同性カップルの育児に関する研究計77本を調査→「子に有害」説はわずか4本、しかも全部が欠陥研究(米調査)

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同性カップルの親を持つことが子の幸福に与える影響について述べた研究77本を、コロンビア大学ロースクールのチームが調査。親が同性愛者であることが子に害をもたらすとする研究は4本のみで、どれも外れ値をサンプルとした欠陥研究だったとのこと。

詳細は以下。

Why attacks on same-sex parenting depend on flawed research - LA Times

上記リンク先の筆者ナサニエル・フランク(Nathaniel Frank)博士は、コロンビア大学ロースクールでおこなわれた、同性カップルの子育てに関する過去最大の論文レビュープロジェクト"What We Know Project"を指揮。計77本の先行研究を調べました。結果として、77本中73本の研究が、ゲイやレズビアンの親を持つことは子供にまったくデメリットを及ぼしていないという結論に到達していたとわかったのだそうです。そして残る4本、すなわち同性愛者に育てられることは子供にとって有害とする研究には、すべて同じ「致命的欠陥」があったとのこと。何がどう欠陥なのか、筆者は以下のように説明しています。

これらの研究(訳注:同性愛者の子育ては有害とした研究4本のこと)で調査された子供のうち、本当に同性の親たちに育てられている子はせいぜい一握りで、それ以外の子供たちは親のうち片方が同性愛者であるか、または同性との出会いがあったという家庭、すなわち大きなストレスに耐えていたり、しばしば引き裂かれたりする家庭で育てられていた。結局のところ、外れ値を研究しても、同性カップルの子育てについて何もわかりはしない。昔からよく知られていること、つまり、家庭のストレスや崩壊は子供にとって不利益となり、安定した関係は益となるということがわかるだけだ。

At most a handful of the children who were studied were actually raised by same-sex parents; the rest came from families in which one parent was gay or had a same-sex encounter, families that had endured great stress and often split apart. So in the end, the outlier studies don't tell us anything about same-sex parenting; they just tell us what's long been known: Family stress and disruption are bad for kids, while stable ties are good for them.

なお、この77本の研究の論文名と著者名、アブストラクトはすべてコロンビア大学ロースクールの以下のWebページで読むことができます。ソースへのリンクも貼られています。

さて、元記事を読んでいる間ずっと思い出していたのが、ブログ「ゲイリーマンのカミングアウト的思考」最近紹介されていた、宝塚の大河内市議が主催する「保守の立場から学ぶLGBT勉強会」で聞かれたというこちらの意見です。

性的マイノリティが子育てすることの弊害、子どもの情緒発達に影響がある

こういうことをツルッとおっしゃる方は、いったい何を根拠に発言なさっているのだろうと、こちらとしては首をひねってしまうわけですよ。ひょっとして、性的マイノリティの子育ての実態について調べようとして、偶然にも77本中4本しかない貴重な「弊害がある」説の論文にだけ行き当たり、なぜかサンプルの偏りに疑問を感じることなく納得してしまわれたということなのでしょうか。それとも――こちらの可能性の方が高そうな気がしますが――ご自分の漠然とした想像だけで「弊害、子どもの情緒発達に影響がある」という結論に飛びついてしまわれたのでしょうか。日本語ではそのような、ある集団や個人に対して、客観的な根拠なしにいだかれる非好意的な先入観や判断のことを、偏見って言うんですけどね。

今後もおそらく、客観的な根拠なしに同性カップルの子育てを「害がある」と主張する人はいくらでも出てくることでしょう。そのたびに上記の77本の論文アブストラクトが読めるページを紹介してあげるといいんじゃないかと思います。もしも「害がある」説の支持者が、73本の先行研究をくつがえすだけのエビデンスをお持ちなら、それはそれでぜひアカデミックな場で論文として発表していただきたいです。これは皮肉ではなく、本当に心からそう思います。害があるのなら、それを解消する方法を考え出すのが人間の叡智というものですから、そのためにも巨人の肩の上に立ち、事実について検討しましょうよ。想像だけで地べたで不安がるのではなく。