石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

南アフリカでレズビアン惨殺 コミュニティが抗議の行進

ユース変更停止Homophobia Builds安全性、多様性の公差、Acceptanceのポスター(ポスター# 528?)

注:以下、性暴力に関する表現があります。フラッシュバック注意。

2015年12月18日、南アフリカのハウテン州で若いレズビアンが惨殺死体で発見されました。地域のLGBTIコミュニティはこれをホモフォビックな暴力による殺人であるとし、抗議の行進を開催すると発表しました。

詳細は以下。

Vaal LGBTI livid after brutal killing of young lesbian | eNCA

被害者のMotshidisi Pascalinaさんの年齢は、18歳から20歳と報道されています。2015年に大学入学許可を得たばかりだった彼女は、同年12月16日を最後に消息を絶ち、その2日後、切り刻まれて焼かれた遺体となって自宅近くで発見されました。Young Communists’ League(YCL)のCedric Davids氏によれば、遺体には亡くなる前にレイプされた形跡があり、両目がえぐり出され、外陰部が切除されていたとのこと。身体のほとんどの部分が焼かれていたため、両親さえも当初この遺体が娘のものだとはわからず、唯一確認できた脚のタトゥーでPascalinaさんだと判明したのだそうです。

南アフリカでは、レズビアンが「異性愛者に『矯正』する」という名目でレイプされたり、暴力をふるわれたり、あげく殺されたりすることは稀ではありません。詳しくは以下を。

地元のLGBTIコミュニティは、Pascalinaさんもまたホモフォビックな暴力によって殺されたのだと主張しています。以下、Gay South Africa onlineよりDavidsさんのことば。

「この地域でLGBTIに対する犯罪が報告されたのはこれが初めてではありません。犯人が責任を問われずにいるレイプ事件は、他にも2件あります」とDavidsは語った。

「性自認や性表現を理由としてこれ以上女性に危害を加えることは許しません」

“This is not the first crime reported against the LGBTI in the area. There are also two rape cases which have not seen the perpetrators being brought to book,” said Davids.

“We are not going to allow people to harm other females because of their gender identity and sexual expression.”

同じくGay South Africa onlineによれば、YCLは非営利団体「Vaal LGBTI」と協力し、LGBTIの人びとをターゲットとした犯罪および地元当局の怠慢に抗議するためのマーチを、2016年1月12日に開催すると発表したとのこと。

ハッシュタグ#MotshidisiPascalinaではこんな意見も見られました。

訳:「Motshidisi Pascalinaの話は悲劇だ。わたしたちの多くは、単にまだレイプされたり殺されたりしていないだけだ。わたしたちは侮辱を聞かされ、引っぱたかれ、つばを吐きかけられている」。

訳:「わたしの恐怖、つまり自分が暴力の犠牲になり、取り残された母がわたしを埋葬するという恐怖が現実になる日のことを考えずにはいられない。わたしがMotshidisi Pascalinaでもおかしくないのだ」。

訳:「ある男はわたしをレイプして殺すと言い、わたしをスーパーマーケットから出させまいとした。わたしは警察官が歩いて入ってくるのを見て、走って逃げ出した」。

訳:「主要メディアはMotshidisi Pascalinaのことを報道しない。彼女はホモフォビックな南アフリカの、黒人のレズビアンだから。彼女の名前を口にしてください、彼女の話をシェアしてください」。

訳しててどんどん気が滅入ってきますが、とりあえずあたしが「LGBT差別」と聞いてぱっと連想するのはこういう事件です。だから「LGBT差別を許容したい」などという粗雑な物言いを見かけると、「これを『許容』するだって!? 本気で!?」と驚愕してしまいます。「そっかー、この人あたしが目ん玉えぐり出されて性器を切除された黒焦げ死体になって道端に転がっていても『許容したい』って言っちゃうんだー、へー」とか、素で思っちゃうわ。

「そんなひどい事件のことなんか知らない、もっと軽度の差別の話をしている」っちゅー意見には聴く耳持ちませんよ。第一に、ろくに実態すら知らないことを「許容」できると思ってしまう雑さ・無邪気さがお笑いぐさだし、第二に「自分にはどこからどこまでなら差別していいか線引きをする資格がある」と思い込める特権意識は有害でしかないからです。 Pascalinaさんを惨殺した犯人だって、おそらくは「ここまでならやっていい」という自己判断による線引きのもとに実行したのでしょうし、何の役にも立たないんですよこういう俺基準は。

なおThe Citizenによれば、現在この殺人事件に関して4人の容疑者が逮捕されているとのことです。心して続報を待ちたいと思います。