石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

この百合がすごい! 2009

2009年にレビューした百合/レズビアンもののうち、特におすすめの10作品(順不同)のリストです。

漫画『シュガーはお年頃(3)』(二宮ひかる、少年画報社)

シュガーはお年頃 3 (ヤングキングコミックス)

シュガーはお年頃 3 (ヤングキングコミックス)

周囲から浮いてる女子高生ふたりのバディもの、あるいは熱いラブストーリーの最終巻。ものすごく面白かったです。サスペンスフルな展開と、熱い愛情、そして予想外の方向からずしんと響いてくるハッピーエンディングにただただ圧倒されました。ぜひ読んでください、そしてじわっとしたり心臓を打ち抜かれたりしてください。

漫画『ストロベリーシェイクSWEET(2)』(林家志弦、一迅社)

ストロベリーシェイクSWEET (2) (IDコミックス 百合姫コミックス)

ストロベリーシェイクSWEET (2) (IDコミックス 百合姫コミックス)

ヘタレなアイドル「樹里亜」(♀)とその後輩「蘭」(♀)の恋を描くドコメディ、最終巻。面白かったです! 焦点を当てる女女カップルの数を絞ったのが功を奏して、テンポのよい展開の中で愛とギャグが炸裂しまくっています。悶々としたすれ違いも、「女どアホウ甲子園」(p. 143)状態のド直球告白もやたらと可愛くて、たまりません。百合とレズビアニズムとをいちいち分離させないところもとてもよかったです。

漫画『半熟女子(2)』(森島明子、一迅社)

半熟女子 2 (IDコミックス 百合姫コミックス)

半熟女子 2 (IDコミックス 百合姫コミックス)

「八重」と「ちとせ」のみずみずしいラブストーリーの第2巻。これが最終巻となります。ふたりのキュートな「半熟」っぷりも、やわらかい絵柄のとろけるようなエロティシズムも、みんなよかった。1巻と変わらぬほどよいリアル感の中に、八重の成長やLGBTプライドのようなものをさりげなくしのばせてあるところも楽しかったです。もう一組の百合カップル「マリ」と「蘭」の甘酸っぱい恋も楽しかった! 前作もそうですが、女性が好きな女性が安心して読める素晴らしい漫画だと思います。

小説『紫色のクオリア』(うえお久光、アスキー・メディアワークス)

紫色のクオリア (電撃文庫)

紫色のクオリア (電撃文庫)

「人間がロボットに見える」という特殊な視覚を持つ少女「鞠井ゆかり」と、そんなゆかりを守ろうとする主人公「波濤マナブ」(♀)の物語。めっちゃくちゃに面白かったです。あたかも学園日常ラノベ風な冒頭部に騙されてはいけません、これは実は「羊の皮を被った狼」ならぬ、「ラノベの皮を被った超オモシロ平行世界SF」。スリリングかつスピーディーな展開がいいし、量子力学というとっつきにくい分野を扱いつつ少しも難解にならない語り口調もみごと。そしてそして、マナブからゆかりへの想いの熱さがまたいいんだ。一般的な「恋愛」をはるかに上回るスケールの想いと、何度か出てくるキスシーンがすばらしかったです。

小説『蒼穹のカルマ(1~3)』(橘公司、富士見書房)

蒼穹のカルマ1 (富士見ファンタジア文庫)

蒼穹のカルマ1 (富士見ファンタジア文庫)

蒼穹のカルマ2 (富士見ファンタジア文庫)

蒼穹のカルマ2 (富士見ファンタジア文庫)

蒼穹のカルマ3 (富士見ファンタジア文庫)

蒼穹のカルマ3 (富士見ファンタジア文庫)

「シスコンならぬ姪コンの最強ヒロイン『鷹崎駆真』(たかさきかるま)の冒険」をテンポ良く描くライトノベル。駆真から在紗へのけたはずれの愛情が強烈だし、オタ作品のお約束をメタ視して笑い飛ばすギャグセンスも痛快。また、特に3巻は伏線の仕掛け方と回収の仕方がみごとでした。さっくり読める微百合なアクションコメディとしておすすめです。

歌集『いけないことですか?』(佐竹沙織、文芸社)

いけないことですか?

いけないことですか?

女のコ同士の恋をうたう97首の短歌が詰まった恋愛歌集。甘酸っぱくみずみずしい恋歌ばかりで、最後までとても楽しく読むことができました。プラトニックな恋ばかりでなく欲望込みの想いもうたっているところや、ありがちな「上級生と下級生」パターンにばかり拘泥しないところがとてもよかったです。なんちゃって臭がまるでないところも素晴らしかった。

映画『4分間のピアニスト』

4分間のピアニスト [DVD]

4分間のピアニスト [DVD]

レズビアンの老ピアノ教師クリューガー先生と、殺人罪で服役中の10代少女ジェニーが、ピアノのレッスンを通じて心の絆を築いていくというヒューマンドラマ。いい映画でした。レズビアニズムがメインテーマの作品ではないのですが、クリューガー先生のつらい過去のエピソードが胸に刺さること刺さること。このふたりがぶつかり合いながら心を通わせ、それぞれ少しずつ変わっていくさまが感動的で、特にラストシーンは鳥肌立ちました。

映画『Spider Lilies(刺青)』(※邦題は『Tatto -刺青-』)

珠玉のアジアン・ライブラリーVol.4 「Tatto -刺青-」 [DVD]

珠玉のアジアン・ライブラリーVol.4 「Tatto -刺青-」 [DVD]

いわゆる「ウェブカム・ガール」(ライブカメラを通してセクシートークをしたり体を見せたりするアルバイト)をしている少女「小緑」(シャオリュー)と、刺青の彫り師「竹子」(日系なのでそのまま『たけこ』。または中国語読みでZhuzi)のラブストーリー。周美玲監督による、台湾発のレズビアン映画です。刺青という要素を通じて登場人物たちの痛みや孤独を描いていくところが面白いし、ビタースウィートなストーリーもよかった。映像の美しさも特筆もの。

映画『Drifting Flowers(漂浪青春)』(※邦題は『彷徨う花たち』)

『Spider Lilies(刺青)』(レビュー)の周美玲監督による3話構成のレズビアン映画。電車のシークエンスを使って3つの話を巧みにつなぎ、愛や自分の居場所を求めてさすらう主人公たちの姿を柔らかく描き出しています。レズビアニズムを扱いながら、単に女性同士の恋愛や官能だけを追って終わってしまう作品ではないところが好印象。中性的なレズビアンを複数登場させた点も、現実味があって面白いかと。心の奥深くにしみじみと響いてくる、よい映画でした。