マレーシア保険省が、同性愛やトランスジェンダリズムをいかに「予防」するかについての動画コンテストを開始。LGBTの人々への憎悪や暴力を煽る可能性があるとして批判されています。
詳細は以下。
Malaysian authorities hold contest to help 'prevent' people being gay or transgender
イスラム教を国教とするマレーシアでは、先日も実写映画『美女と野獣』の脇役の同性愛を理由とした上映延期騒ぎがあったばかり。今回の動画コンテストでは、保健省のウェブサイトが「性同一性障害」*1やゲイ、レズビアン、トランスセクシュアル*2、トムボーイ*3などについて言及し、
- このような人たちが結果的にどうなってしまうのか
- このような人たちが「(シスヘテロ以外の性的指向や性自認を)予防・制御し、助けを求める」にはどうすればいいか
……を描く動画を募集しているのだそうですです。このコンテストは2017年6月1日に開始され、応募期限は同年8月31日。入賞作には1000リンギット(約24000円)から4000リンギット(約103000円)の賞金が贈られるとのこと。以下、Telegraphより引用。
「ショックでした。これは少数者に対する差別と憎悪と、暴力までも奨励しています」と、トランスジェンダーの人々のためのチャリティ団体「シード・ファウンデーション」のトランスジェンダー活動家、Nisha Ayubは話した。
"I was shocked. This is encouraging discrimination, hatred and even violence towards the minorities," said transgender activist Nisha Ayub from the Seed Foundation, a charity working with transgender people.
「保健省は健康問題を調査すべきなのに、今や彼らはこんな動画を投稿する人たちに賞を与えようとしているのです。このことは、社会に対して非常にネガティブなメッセージを送っています」
"The health ministry should look into health issues, but now they are giving out prizes for people to post such videos. This is sending a very negative message to our society," Nisha told the Thomson Reuters Foundation.
政府機関みずから同性愛や性別違和は「予防」すべき悪しきことであるというメッセージを発するというのは、当事者にとってはえらい迷惑です。こうやって常日頃目にするものから刷り込まれたフォビアが、「差別するつもりはありませんが」とか「こうするのが国のため」とかなんとかいう言葉で都合よくコーティングされたアビュースになって後日炸裂するんだからね。それに、同性愛者を異性愛者に変えたり、トランスジェンダーの人をシスジェンダーに変えたりできるという科学的根拠は発見されておらず、そのような試みはむしろ当事者のうつ病などのリスクを高めると以前から言われているのに、一国の保健省がそれすら知らない(あるいは知っていて無視している)というのは愚かの極みでしょう。わざわざ税金を使って人の健康をおびやかすのが、この人たちの仕事なわけ?
同じアジアでも台湾は先日最高司法機関が同性婚を認め、ベトナムでも厚生省や司法大臣が同性カップルの法的保護を訴えたりしているのとはえらい違いだと感じました。もっともインドネシアでは先日同性カップルが公開むち打ち刑に処せられたばかりですし、シンガポールでも政府が性的マイノリティのプライド・イベントを潰すために外国企業からの支援をシャットダウンしてしまったりしているので、アジアという地域だけでひとくくりにすること自体に無理があるのかもしれませんが。
このニュースを報じたLGBTQ Nationの記事につけられていた、こちらのコメントに同意です。
このコンテストで唯一の良いことは、参加者がインターネットでリサーチをしようという気になること。これで目が覚める人も、中にはいるかも。
The only good thing about this contest is the participants are encouraged to do research on the internet. It might open a few eyes.
ほんとにね。それぐらいしかメリットが思いつかないわ。