米国バージニア州マディソン郡の教育委員会が、地元の公立ハイスクールの図書館から21冊の本を排除すると発表。ネットユーザーは疑問や批判を表明し、3冊禁書にされたティーヴン・キングも痛快な意見をツイート。そして地元の公立図書館は、禁書にされた21冊すべてが読めることを保障しています。
この21冊にどんな本が含まれるのかについては、Bookstrなどで紹介されています。(邦訳があるものは)邦題に置き換えると、以下の通り。
- 『侍女の物語』(マーガレット アトウッド著)
- 『はみだしインディアンのホントにホントの物語』(シャーマン・アレクシー著)
- 『ウォールフラワー』(スティーヴン・チョボウスキー著)
- 『アンラヴェルミー ほんとうのわたし』シリーズ(計6冊)(タヘラ・マフィ著)
- 『タール・ベイビー』(トニ・モリスン著)
- 『青い眼がほしい』(トニ・モリスン著)
- 『スーラ』(トニ・モリスン著)
- 『ラヴ』(トニ・モリスン著)
- 『肉体泥棒の罠』(アン・ライス著)
- 『夜明けのヴァンパイア』 (アン・ライス著)
- 『殺人容疑』(デイヴィッド・グターソン著)
- Empire of Storms (Throne of Glass, 5) by Sarah J. Maas
- 『骨の袋』(スティーヴン・キング著)
- 『11/22/63』(スティーヴン・キング著)
- 『IT』(スティーヴン・キング著)
- Furyborn by Claire Legrand
このリストについての、Redditでの反応はこんな。
- 『侍女の物語』について
- 「女性たちに終盤がどうなるか知ってほしくないんだ」
- 「中絶を禁止してから1年もしないうちに侍女の物語を禁書にするのはちょっと不吉すぎ」
- トニ・モリスンについて
- 「彼らは本当にトニ・モリスンが嫌いだよね……」
- 「米国における黒人の存在を抹消することを、隠そうとすらしてない」
- 「彼らは本当にトニ・モリスンが嫌いだよね……」
- 『夜明けのヴァンパイア』について
- 「ホラー小説というよりホモエロティックなロマンス小説だから、保守派が反対するのはわかる。保守派の中にこの本を読んだ人がいたということがちょっと衝撃」
- 「でも、それならなんでライスの他の本は禁止しないんだろう? 全部そんななのに」
- 「ホラー小説というよりホモエロティックなロマンス小説だから、保守派が反対するのはわかる。保守派の中にこの本を読んだ人がいたということがちょっと衝撃」
- 『11/22/63』について
- 「子供たちが『米国の歴史の流れを変えることができる』」と考えるんじゃないかと心配してるってこと?」
- 「60年代はアメリカ全体にとって完璧な時代ではなかったと言われることが、MAGAの信念にそぐわないんだ。彼らは世の中を60年代に戻したがってるんだから」
- 『IT』について
- 「ゲイキャラが〇〇〇(ネタバレ防止のため訳者の一存で伏せます)、人種差別的な罵り言葉が大量に出てきて、家庭内での実にひどい虐待があって、子供の〇〇〇〇(同)があるんだから、彼ら(保守派)の趣味にはもろに合っているのでは?」
- 「共和党員たちによれば、子供との〇〇〇〇(同)は家庭の秘密か、教会のバックルームか、ボーイスカウトのミーティングの後のためにとっておくものなんだ」
- 「ゲイキャラが〇〇(同)ことが、たいへんな悪として描かれてるからだよ」
- 「ゲイキャラが〇〇〇(ネタバレ防止のため訳者の一存で伏せます)、人種差別的な罵り言葉が大量に出てきて、家庭内での実にひどい虐待があって、子供の〇〇〇〇(同)があるんだから、彼ら(保守派)の趣味にはもろに合っているのでは?」
そして、3冊禁止されたスティーヴン・キングの意見はこちら。
Hey, kids! It's your old buddy Steve King telling you that if they ban a book in your school, haul your ass to the nearest bookstore or library ASAP and find out what they don't want you to read.
— Stephen King (@StephenKing) January 18, 2023
ざっくり訳:
「やあ、子供たち! きみらの旧友スティーヴン・キングからのお知らせだよ。きみの行ってる学校で何か本が禁止されたら、すぐに最寄りの本屋か図書館に飛んでいって、彼らがいったい何を読ませたくないと思ってるのか調べるんだ」
すごくまっとうな意見だと思います。そして実際、マディソン郡公立図書館 (Madison County Public Library)は禁書リストの中で唯一蔵書になかったFurybornを新たに発注してまで、21冊すべてを読めるようにしているとのこと。さらに言うと、ブルックリン公立図書館(Brooklyn Public Library)ではこうした禁書の動きに対抗する"Books Unbanned"という取り組みがなされていて、米国内の13歳から21歳までのすべての人が、他の場所では排除されてしまった本の電子書籍やオーディオブックを同図書館から借りることができるんだそうです。知る自由を保障する仕事っていうのはこうでなくちゃいけないし、そうでなくなったら本当に国全体がギレアデ共和国一直線だと思います。
最後に余談だけど、「キングがいいこと言ってる」と上記ツイートをうちの彼女に教えたときの反応はこんなでした。
これはそういう本をちゃんと収蔵して貸し出してた小学校の図書館が偉いと思うの。図書館たるもの、今後もこうであり続けてほしい。