石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。

姉妹愛はいいけど謎は弱め―『オーファン・ブラック 暴走遺伝子』シーズン2感想

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姉妹愛が光るシーズン。ただしドラマ性で前シーズンに勝てず

過去におこなわれた違法なクローン実験をめぐる、サスペンスフルなSFドラマ。クローンたちの姉妹愛やブラックな笑い、そして新たなLGBTテーマがとてもよかった。一方、ドラマティックな謎の創出という点では、残念ながらシーズン1レビュー)には及ばないかと。

"You make me cry, seestra."

シーズン2でもコシマとデルフィーヌの百合恋愛は順調に続行中。かわいらしいいちゃいちゃも、ぐっとくる殺し文句も詰まってます。でも、それ以上によかったのが、クローン同士の姉妹愛。恋愛よりもむしろこっちに大注目よ!!

ネタバレ回避のため詳細は伏せますが、本シーズンでの姉妹愛エピソードの白眉は、第5話でとあるキャラがとあるキャラにこんなことを言う場面です。

You make me cry, seestra.

"seestra"とは姉妹のことですよ、念のため。この台詞をつぶやくキャラのみならず、見ている観客まで涙腺をゆるまされてしまうという名場面中の名場面です。

ほか、第10話でクローンのひとりが初対面の別のクローンをまるで小さな妹を慈しむように抱きしめる場面も、ぐっときました。タチアナ・マズラニー、マジ天才。どのクローンもすべて同じ人が演じているのだという事実が(またしても)頭からすっ飛ぶ名演技です。これらの回以外でも、クローンたちの集まり、通称「クローン・クラブ」の心の交流には見どころが多く、今シーズンの最大の売りは姉妹愛だと言っても過言ではありません。

ブラックな笑いについて

1種のコメディ・リリーフとして、アリソンが大活躍しています。公民館での素人演劇、ガレージの「改装」(または『オイル交換』)など、いかにも郊外の専業主婦っぽい要素でこれだけ黒い笑いを提供してくれるとは! 鼻持ちならないサッカー・マムだったはずのアリソンが、どんどん好きになってしまいました。

新たなLGBTテーマ

今シーズンでは同性愛だけでなく、トランスジェンダーの要素も出てきます。おかげで物語全体に通底する「アイデンティティーとは何ぞや」というテーマがさらに複層的なものになっているし、ちょっとひねったケミストリーの描写にもドキドキさせられました。

シナリオはシーズン1に及ばず

シナリオ全体の完成度は、残念ながらシーズン1ほど高くはないと思います。中心となる謎が弱いからです。

シーズン1がなぜあんなに面白かったのかというと、第1話でカーチャの口から飛び出すこの台詞が物語の駆動力として大活躍していたからだと思うんです。

ひとりなのに複数で、家族がいない私はだれ?

この問いへの答えをひたすら追い続け、極上のサスペンスとアクションを作りだしてくれたのがシーズン1。しかしシーズン2には、これに匹敵するほどドラマティックな謎は登場しません。あえて言うなら「ひとりなのに複数で、家族がいない私を作ったのはだれ?」という視点があるにはあるのですが、謎解きのプロセスがごちゃごちゃしすぎ、また悪役の演出が陳腐すぎて、テンションに欠けます。

緊張感の低下をキャラの物理的ピンチで乗り切ろうという試みなのか、やたらと「敵にさらわれて/さらわれそうになって危機一髪」パターンが多用されることにも辟易しました。第10話まで見終わった時点で、「おまえら全員ピーチ姫か!?」とつぶやいてしまったと言えば、そのマンネリぶりが少しは伝わるでしょうか。次のシーズンでもう少し軌道修正されるといいのだけれど。

まとめ

ワンセンテンスでまとめるなら、「タチアナ・マズラニーの演技は(相変わらず)最高、しかしシナリオは今ひとつ」。愛も笑いもLGBTテーマもよかったし、全体としても5段階評価で少なくとも3.5から4はつけたいクオリティではあるのですが、肝心の謎解きの部分が魅力薄だったのがどうにも残念です。願わくばシーズン3ではストーリーがもう少し整理され、シーズン1の緊張感が戻ってきますように。

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