石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

物体Xとエイリアンに失礼だ―ドラマ『スーパーガール』2x11感想

ポスター/スチール 写真 A4 パターンH スーパーガール 光沢プリント

姉妹愛はいいが本筋がぐだぐだ

メガンを狙うホワイトマーシャンがDEOに侵入する回。アレックスとカーラの姉妹トークこそよかったものの、話の大筋には難がある感じ。古典的なSF設定をふたつも使って薄っぺらな二番煎じをやるぐらいなら、最初からひとつに絞った方がよかったのでは。

古典的SF設定の無駄遣い

今回のメインプロットを簡単に言うと、「『遊星からの物体X』ごっこ&『エイリアン』のノストロモ号爆発カウントダウンごっこ」です。侵入者のホワイトマーシャンが隊員の誰かとすり変わったためDEO本部がまるごとロックダウンされ、互いが疑心暗鬼に陥る中、ホワイトマーシャンをあぶりだす検査が実施されるという流れが前者。そのホワイトマーシャンの策略でDEOの原子炉が爆発しそうになり、カウントダウンのアナウンスが流れる中ウィル(ジェレミー・ジョーダン)が必死に解除作業をするという流れが後者。どちらもSFにはつきものの古典的シチュエーションであり、それらを『スーパーガール』でもやってみたかったというのはわかるんですが……それにしちゃ、掘り下げが甘すぎない?

まず、『遊星からの物体X』シチュエーションの肝は心理劇なのに、その部分を円卓の周りでほんのちょっぴり口論しただけで終わらせてしまう意味がわかりません。一応後の方にもうひとつひねりは用意されているものの、そちらも本家『物体X』に比べれば薄味そのもの。そして爆発阻止シチュエーションに至っては、(1)そもそもDEOはなぜ原子炉をそんなに簡単に爆発させられる状態で使っていたのか、(2)しかも「暴走したら制限時間以内に操作しないと止められない」というアホアホ設計になっているのはなぜなのか、(3)あと数分で街ごと吹っ飛ぶというときにキャラがわざわざ探索の手を止めてのんびり会話し始めるのはなぜなのか、など脚本の穴が多すぎて、緊張感も面白味もダダ下がりになってしまっていたと思います。せめて話を物体X路線かノストロモ号爆発路線のどちらか一方に絞り、キャラたちの言動も整理した方がよかったのでは。

参考までに、『遊星からの物体X』の血液検査の場面をどうぞ。今回の『スーパーガール』は、この緊張感の足元にも近づけていません。

そして、『エイリアン』で主人公が母船の自爆を回避しようとする場面はこちら。今回の『スーパーガール』は、この名シーンへのオマージュにすらなりえていません。

過去の名作とよく似た設定を使うなとは言いません。問題は、それが新味ゼロの小粒な焼き直しで終わってしまっていることです。今回の『スーパーガール』を見ている間、あたしは『glee』シーズン2のオーディションの場面でカート(クリス・コルファー)が"Some People"を歌ったとき、アドバイザーのジェシー(ジョナサン・グロフ)が言ったこの台詞をしきりに思い出していました。

これはブロードウェイの大スターたちが喝采を浴びてきた曲だよ。マーマンやルポーンやバーナデットがね。だから、これを歌うなら後任者としておそろしいほど高い期待にこたえなければならないんだが、きみがそれをみごとにやってのけられたとは思えないな。

You must know that that song was done to great fanfare by such Broadway legends as Merman, LuPone, Bernadette. There are some awfully big heels to fill, and I'm just not quite sure that you nailed it.

先人の偉業をなぞろうとすれば、先人と比較されることは必定。そこで「おそろしいほど高い期待」にこたえられるだけの力量がないのなら、何か新しい工夫を加えるなり、最初から違う土俵で勝負するなりした方がいいと思うんですよねー……。

今週のダンバース姉妹

アレックス(カイラー・リー)がカーラ(メリッサ・ブノワ)に恋のアドバイスをする場面がほほえましくて心なごみました。アレックスのカミングアウト&マギーへの告白エピソードが、単発のできごととして処理されるのではなく、その後の彼女の考え方にもこんなかたちで生かされているというのが面白いです。カーラの「地球の誕生日」(地球にやってきた記念日)をあのアレックスが忘れていたという展開にはだいぶ無理がある気もしましたが、前述の「古典的SF設定の無駄遣い」問題にくらべればまだ見逃せる範疇だと思います。

今週のサンバース

サンバース(アレックスとマギーのレズビアンカップル)は今週も安定した仲良しっぷりを見せています。よしよし、あなたたちはこのままでいてね。

まとめ

もともと女性同士のラブロマンス以外の部分で時に大味さが目立つ(ヘテロロマンスが超行き当たりばったりだとか、科学技術がご都合主義的だとか)シリーズではあったものの、今回ほどその弱点がさらけ出された回もなかったような気がします。シーズン3の製作は既に決定しているとは言え、生き馬の目を抜く米国ドラマ界でこんな雑な話づくりをしていて生き残れるのか、とても心配。姉妹愛とサンバースの愛だけでいつまでも話を引っ張れるとも思えませんし、既存の名作の二番煎じはやめて、もっとこの番組ならではのSFドラマを見せつけてほしいと思います。

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