シーズン2でいちばんいい回かも―ドラマ『スーパーガール』2x19感想（ネタバレ）

今度こそサンバースが主役

悪漢にさらわれたアレックス（カイラー・リー）をマギー（フロリアナ・リマ）が救出する回。プロットに多少の穴はあれど、アレックスとマギーがステレオタイプな「囚われの姫と救い主」パターンとは違う奮闘ぶりを見せているところや、会話のはしばしにリアリティがあるところが大変よかったです。サンバース（アレックスとマギーのレズビアンカップル）が主役とさんざんうたわれていたのにその実ヘテロロマンス主体だったバレンタインデー・エピソードより、こっちの方がよっぽど濃かったわ。

Autostraddleのリキャップのコメント欄で指摘している人がいましたが、このS2E19にはシーズン1の、スーパーガールがパワーを失ったときの話に通じるテーマがあると思います。というのは、アレックスもマギーもただの人間で、何のスーパーパワーも持っていないにもかかわらず、最後まで希望を捨てず戦い続けることで道を切り開いているから。実際アレックスは監禁先で自分の肩を切り裂き、皮下に埋め込んでいた（そして犯人に無効にされていた）GPSトラッカーを取り出してハックするわ、水牢でおぼれそうになってもある方法で最後まであがくわというしぶとさを見せていますし、マギーはマギーで終始刑事らしい冷静さと粘り強さでアレックスを助けています。いよいよダメかというときにふたりがPCの画面越しに交わす会話も気が利いていて、マギーのけなげさと、刑事としての有能さと、アレックスへの深い愛がうまく表現されていると思いました。マッチョな男性ヒーローとその彼女のヘテロ恋愛というシチュエーションだと、なかなか書けない会話なんじゃないかな、あれ。女同士ばんざい。

あとちょっと思ったのが、マギーがここでアレックスに語りかけるような台詞が視聴者に届くことで（といっても日本ではこのシーズン2はまだ放映／配信されてませんが）（うちでは米iTunes StoreでDL購入したものを見ています）（なおシーズン2の日本語版ブルーレイは2017年9月発売らしいから、それも買うつもり）、巷にはびこる「同性同士の交際＝ひたすらセックスだけの関係」のような阿呆な迷信が少しでも減るといいなあということ。実は日本で最近、同性間パートナーシップ登録や同性婚について「なぜ同性同士のセックスを行政が保証しなければならないのか」という理由で反対する意見を見かけて頭痛をおぼえたばかりなのですが、別に同性カップルだからってセックスしかしていないってわけじゃありませんからね。うちらだってマギーさんが言うように初めてのバレンタインデーを一緒に過ごしたり、ふたりで過ごす初めての休暇でどこに行くかでもめたり、食器洗浄機の使い方がわからなくて困惑したり、将来一緒に飼う犬の名前を何にしようと話し合ったりして、つまり、生活しているだけなんですから。そういう日常を守りたいだけなんですから。

なお、冒頭に書いたプロットの穴というのは、

テレパシーが使えるジョン＝ジョーンズが、なぜか誘拐犯がアレックスを隠した場所は読み取れない
異星のシステムすらクラックできる天才ハッカーのウィンが、なぜかたかがIPアドレスの偽装元を探すことができない
以前モン＝エルにあれほど「いきなり腕力行使するな」と言っていたカーラが、なぜか今回はなんでも力で解決したがるうぬぼれ女になっている（途中で改心しますが）

などを指します。ただ、『スーパーガール』はもともと漫画っぽい大雑把さがあるドラマだし、これらの穴をふさぐと今回のサンバースの救出劇＆ラブストーリーが成り立たなくなってしまうので、これぐらいの粗は目をつぶってもいいかなとも思います。とりあえず前回（2x18）まったく出てこなかったサンバースのロマンスが今回これだけフルスロットルで描かれているだけで、あたしは大満足です。ちなみに救出後のDEO本部でのふたりの会話シーンもとてもよかったので（レズビアンカップルがどちらも殺されずにこうしたシーンにたどりつける時代になるまで、いったいどれだけ待ったことか！）、日本語版ブルーレイで見直すのが今から楽しみです。