石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

ドラマ『スーパーガール』の余波、続報。この番組がきっかけで、8歳のレズビアンのために編まれたブックリストをどうぞ

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ドラマ『スーパーガール』のおかげで親にカムアウトできた13歳少女の話を先日紹介しました。実はこれ、前例があったんです。同番組を見て自分はレズビアンだと気づいた8歳児のために、Autostraddleがお薦め本リストを作ってあげてたんでした。

詳細は以下。

8 Middle Grade Books with LGBTQ Characters | Autostraddle

上記記事は、Autostraddleの「ご近所のフレンドリーなレズビアン司書に訊け!("Ask Your Friendly Neighbourhood Lesbrarian!")」というシリーズのひとつ。ケイシー(Casey)さんというレズビアンの司書が、読者からメールやTwitterで寄せられた要望に応じて、おすすめのLGBTQ2IA+関連書籍を教えてくれるというコーナーです。

今回このコーナーには、8歳女児のママからこんなメールが寄せられたとのこと。


こんにちはケイシー。

助けてください! わたしにはとても早熟な8歳の娘がいます。この子は生後9か月でしゃべり始め、2歳になる前には自分は将来女の人と結婚するのだと言っていました。娘はドラマ『スーパーガール』でレズビアンということばを知り、今では誰に対しても当然のように自分はレズビアンだと宣言しています。この青色の髪のおちびさんは、レズビアンの自認を持っているちっちゃな女の子に会いたがっているのですが、わたしはどこにいけばそういう子に会えるのか知りません。うちの近所では、たいていのグループやサービスはもっと大きな子を対象としているのです。娘は本を読むのが好きですから、自分がLGBTQだとわかっているもっと小さな子の話が読めたら、きっと喜ぶだろうと思います。娘が言うには、女の子ももちろんスーツを着ていいのだとか、毎日ボウタイをつけてもいいのだとか、将来の夢に女の人が含まれていてもいいのだとかいうことをいつも他の子やおとなたちに説明しなければならないのがとてもつらいのだそうです。うちのおちびさんがちっちゃなレズビアンに会える場所はどこでしょうかと他の人に尋ねると、たくさんの人が、その子は本当にそのような自己認識を持っているのかとか、あなたは娘さんがそうだと認識しているのかと聞いてきます。わたしは自分の子供たちの言うことに耳を傾けていて、だから、10歳の息子は異性愛者で、8歳の娘はレズビアンだとわかっています。子供たちがわたしに言い、わたしがそれを聞いたから、こうだとわかっているのです。もしこの子たちがいつか違うことを言ったら、わたしは今と同様彼らを信じることでしょう。

よろしくお願いします! マリー

Hello Casey,

Please help! I have a very precocious eight year old daughter who began speaking at nine months and decided that she would marry a woman before she turned two. She learned the term lesbian from the show Supergirl, and now matter of factly proclaims herself a lesbian to anyone. My little blue haired human would love to meet other self-identified tiny lesbians, but I don’t know where to find them. Most groups/services in my area are geared towards older children. She loves reading and would love to read about younger children who know that they are LGBTQ. She tells me that it is heartbreaking to have to continually explain to other children, and adults, that wearing a suit IS something girls can do, they can wear bow ties daily, and when they dream of their future it can include a woman.  When I ask people where I can meet other tiny lesbians for my little human many of them question if she is really so self-aware or if I am identifying her that way. I listen to my children and know that my 10 year old son is straight and my eight year old daughter is a lesbian. I know this because they told me and I listened, and if they tell me something different another time then I will believe them then as well.

Thank you!!! – Marie

ほら、こういうことがあるから、メディアにおけるマイノリティの表象ってものすごく大切なんですよ。主要メディアでの女性の描かれ方を問うドキュメンタリー映画『ミス・レプリゼンテーション』(日本のNetflixで、字幕付きで見ることができます)の中で、「人は、見えていないものにはなれない("You can't be what you can't see)」ということばが紹介されていますが、性的マイノリティの描かれ方についてもほぼ同じことが言えると思います。もっとも性的マイノリティの場合は、「なれない」というより、「自分が何者なのかわからなくて苦しむ」と言った方がより正確ですけど。

あたし自身が8歳だった頃には、TVでレズビアンということばすら聞いたことがなく、もっとずっと大きくなるまでレズビアンの概念すら知らないままでしたよ。女友達が「しょうらいのゆめは、(男性の)およめさん~」などと言いながら嬉しそうにウエディングドレスの絵を描いたり、男女の甘ったるいラブストーリーしか出てこない少女漫画誌を夢中で読んでいたりするのを「心底理解できん」と思っていたのに、それがなぜなのか、わからなかったんです。そこからもう少し経ってようやく目にしたレズビアン像にしても、AVの登場人物だの、サスペンスものの殺人犯だの、芸能人の「レズスキャンダル」の噂など、ネガティヴなものばかり。つまり、とてもじゃないけど自分と同一視したくないような表現ばかりで、そのためにものすごく人生の回り道をしたと思います。それを思うと、今、『スーパーガール』のおかげで少なくともふたりの女の子が無駄な回り道をせずに済んだことが、心の底からうれしいです。

余談ですが、『スーパーガール』がすごいのはレズビアン表象だけではありません。このドラマではヒーローのスーパーガール/カーラのみならず大統領も女性(しかもキャストはリンダ・カーター、つまり1975年のTVドラマのワンダーウーマンよ!)、カーラが働く巨大メディア企業のCEOも女性、大物のおそるべきヴィランも、(特に第2シーズンでは)大半が女性です。そしてDEO(エイリアン対策担当の政府機関)長官や、カーラが第1シーズンで片思いする相手や、強くていわくありげな「緑の火星人」は黒人。さらに、先日述べたように、超バッドアスな女性刑事マギー・ソウヤーはラティーナ。つまりこのドラマにおいては、大役はほぼマイノリティが担当し、白人男性はむしろサイドキックの役回りなんです。そこで「白人差別」「男性差別」と騒ぐのはまだ早い、詳しくは白人ギーク(またはナード)男性ウィンの描かれ方を見てください。つまるところこの作品は、「女と、非白人と、白人の中でも劣位に置かれた者たちが活躍する物語」なんです。これを見て励まされるのは、決しておちびさんのレズビアンだけではないはず。

さて、上記のママからのおたよりを受けてケイシーさんが作成した中学年(9~12歳)向けブックリストは計8冊。うち3冊だけ紹介しておくので、残りは元記事で読んでね。

George

George

  • George (by Alex Gino)
    • クロゼットのトランスジェンダー少女、ジョージ(本当の名前、つまり女性名はメリッサ)を主人公とする児童小説。クラスでやる劇『シャーロットのおくりもの』でどうしてもシャーロット役をやりたいと考えた彼女が、親友ケリーの理解と励ましのもと奮闘します。オーディオブックも出ていて、読んでいるのはNetflixドラマ『センス8』のジェイミー・クレイトンよ!

Raven Pirate Princess: Captain Raven and the All-Girl Pirate Crew #TPB 1 (Princeless Raven Pirate Princess Tp)

Raven Pirate Princess: Captain Raven and the All-Girl Pirate Crew #TPB 1 (Princeless Raven Pirate Princess Tp)

  • Princeless: Raven the Pirate Princess (by Jeremy Whitley)
    • 17歳の非白人クィア少女「レイヴン(別名ブラック・アロー)」が、乗組員が全員女性の海賊船を率いて冒険に乗り出すコミック。物語は、海賊王だった父の後を継ぐはずだったレイヴンが、悪辣な兄弟たちによってすべてを奪われ、「ここで王子様を待ってろ」と塔に閉じ込められ、そこから脱出して船を手に入れるところから始まります。女の子同士のキスシーンもありますが、ただの甘ったるいガール・ミーツ・ガールものではなく、常にスピード感ある展開とクールなアクションが楽しめるところがポイント。格闘シーンときたらまるでよくできた映画を観ているようだし、ミソジニストの男性キャラ連中を皮肉る部分も最高だしで、これを読める小学生はつくづく幸せだと思います。

Drama

Drama

  • Drama (by Raina Telgemeierdrama)
    • 学校の演劇で舞台装置を担当することになった12歳のミュージカルオタク、キャリーが、舞台の上でも下でもさまざまな騒動(ドラマ)を経験するという筋立てのコミック。序盤でゲイだとカミングアウトするキャラがいて、ほかにも両性愛またはクィアの要素が出てきます。まるで最高に脂がのっていた時期の『Glee』を12歳バージョンにしたかのような、大変よくできた思春期群像劇で、キャラたちの迷走する恋模様も、トラブルにぶつかりながら舞台を作り上げていくプロセスも、本番での"Show must go on"な緊迫感もすばらしいのひとこと。男の子同士のキスシーンもあり、超キュートですよ。

ドナルド・トランプの米大統領選勝利で「マイノリティへの差別と迫害にOKサインが出た」と勘違いする人が続出している今こそ、子供には積極的にこういうものを見せたいよね。この先どんな激しい憎悪の大津波が来ようと、あたしは『華氏451度』のラストシーンで川べりを歩く男たちのように、こうした物語のことを伝え続けるつもりです。あたしたちには、それが必要なんです。

SUPERGIRL/スーパーガール<ファースト> コンプリート・セット(3枚組) [Blu-ray]

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SUPERGIRL/スーパーガール <セカンド・シーズン>ブルーレイ  コンプリート・ボックス(4枚組) [Blu-ray]

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