石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

そしてマギー・ソウヤーは微笑んだ―ドラマ『スーパーガール』2x22感想(ネタバレ)

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OITNBやSense8と同じあの展開が!

起死回生のチャンスに賭け、カーラはレア女王と一対一の決闘へ。苦渋を舐めつつも、最強のヒーローとしてナショナル・シティを守り抜きます。一方、アレックスとマギーの関係もまさかの急展開。あたかもOITNBやSense8とシンクロしたかのようよ。

今週のサンバース

これまでローラーコースター展開を繰り広げてきたアレックス(カイラー・リー)とマギー(フロリアナ・リマ)のレズビアンカップル、通称「サンバース」には、このシーズンフィナーレでもやはり驚きのシナリオが用意されていました。『Sense8』S2E11や『オレンジ・イズ・ニューブラック』S5E12にも出てきたあの展開だと言えば、レズビアン要素がある海外ドラマがお好きな方には一発でわかることでしょう。面白いことにこの3話、リリース日まですごく近いんですよ。時系列に沿って並べると、こんな。

  • 『Sense8』S2E11(2017年5月5日)
  • 『スーパーガール』S2E22(2017年5月22日)
  • 『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』S5E12(2017年6月9日)

これらを一通り見た後、一瞬「今ってこういう展開が流行りなのか?」と思ってしまったのですが、たぶん、そういうことじゃないんですよね。現実世界で起こった変化が、このタイミングで一気にフィクションに反映され始めたということなのだと思います。

日本ではなぜだか「フィクションに政治を持ち込むな」だの「フィクションと現実は別」という主張がしばしば唱えられているみたいですが、実際には、フィクションというものは否が応でもそれが作られた時代と場所の価値観や、社会の仕組みを反映せざるを得ないものだと思います。ストーンウォール以前に作られた映画『噂の二人』(1961年)では、レズビアンの関係は「身の破滅をもたらすスキャンダル」でした。でも、それから半世紀後、おりしも米軍の"Don't ask, don't tell"ポリシーが撤廃された年(2011年)に公開された映画『Cloudburst』では、主役の老レズビアンカップルは、「社会の偏見と戦う、たくましくもユーモラスで好もしい存在」として描かれています。別に、この半世紀の間に女性同性愛者の本質が変化したというわけではありません。もし『噂の二人』のレズビアンキャラが生き延びて順当に年を取っていれば、『Cloudburst』のステラやドットのようなおばあさんになっていたことでしょうよ。変わったのは、同性愛者を取り巻く社会の方です。

その『Cloudburst』ですら、今見ると古いもんね。ポリティカルな状況の変化のおかげで、今や米国のレズビアンカップルは、ステラやドットのような苦労をせずとも今回のサンバースのような会話ができるようになっていますから。そうは言ってももちろん、わずか1か月ほどの間に都合3回も同じ展開を目にしたことで、「もう少し違うことをしてみてもいいのでは……?」と思わなかったと言えば嘘になりますが、

  • 「今自分は歴史の変動に立ち会っているんだなあ」という感慨の方が大きい
  • マギー・ソウヤーのでっかい笑顔がまぶしすぎて、文句をつける気になれない

との2点から、「もうこれはこれでよし」とあたしは結論づけています。

そうそう、サンバースの場合、出会ってからわずか数か月でこれはどうよというツッコミも可能ではありましょう。でも、そんなときにはS2E8のマギーさんの名台詞を思い出してみましょう。そう、人生は短いんだから、これでいいのよ!

その他

モン=エルの処遇がこうなるとは予想していなかったので、後半の流れにはちょっとびっくり。ただ、少し調べてみたところ、コミック版ではモン=エルはこれがきっかけで『レギオン・オブ・スーパーヒーローズ』シリーズにかかわることになるのだそうで、ひょっとしたらその設定を使って次シーズンで『スーパーガール』と『レギオン・オブ・スーパーヒーローズ』のクロスオーバー展開が描かれるのかもしれません。正直もうモン=エルのファックボーイっぷりは1秒たりとも見たくないので(どうしてもヘテロ恋愛を出さなきゃならないのなら、ジョン=ジョーンズとメガンでいいじゃん!)、せいぜいゲストキャラぐらいにしてくれるとありがたいんだけど、無理かしら。

まとめ

キャットは帰ってきてるし、スーパーガールは再び「強いヒーロー」の座に返り咲いてるし、サンバースは幸せだし、モン=エルはああなったしで、望んだことがいっぺんに実現しすぎておろおろしてしまいそうなシーズン・フィナーレでした。ひょっとしたらシーズン2後半のぐだぐだっぷりはこの終盤の小気味よさを盛り上げるためのプロレス的ギミック(ほら、ヒールが栓抜きでベビーフェイスを殴り続けて観客をイライラさせる的な)だったのだろうかとまで思ってしまったほど。何はともあれ、最後まで「死せるレズビアン症候群」("dead lesbian syndrome"、レズビアンキャラには絶対にハッピーエンディングを用意せず悲劇的な死を迎えさせるという、古今東西のフィクションに見られる傾向のこと)に陥らずに「アレックスがすばらしい人で、クィアである」ところを力いっぱい描き続けてくれたシーズン2よ、ありがとう。2017年10月9日に本国で始まるシーズン3も、必ず見ます。

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