石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

公式が最大手―ドラマ『スーパーガール』2x08感想(盛大にネタバレ)(追記あり)

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公式が全力疾走中

もう何なのこのドラマ! あらゆるファンガールの妄想と想像を超えて、どんな薄い本も追いつけない速度で公式が突っ走ってるわよ! それでいて構成は手堅いし、レズビアン視聴者が共感せずにはいられないツボをガッシガッシ押さえてくるし。大好き。

感謝祭、告白、そしてキス

今回は感謝祭のほのぼの食事シーンに始まり、そこから一転、カドマス研究所が作ったウイルスをめぐる緊迫感あるストーリーが展開されます。モン=エル(クリス・ウッド)がユーモアで、ジョン・ジョーンズ(デイヴィッド・ヘアウッド)が戦いの場面でそれぞれとてもいい味を出しているし、来週の『フラッシュ』とのクロスオーバー回へのつなげ方もみごとでした。しかし、それらのどの要素を束にしてかかっても、ラスト近くでアレックス(カイラー・リー)とマギー(フロリアナ・リマ)がついに恋人同士になる場面のインパクトには到底かないません。マギーからアレックスへのまさかの逆告白と、2回のキスが出てくるんですよ、ここで! 早くも!

またその告白シーンがよくできていましてね。ピザやパジャマなどを使って暖かくくつろいだ雰囲気を表現するという小技や、マギーの台詞の奥行と真実味(あれって大抵のレズビアンが、たとえ言語化しなくても一度は考えたことがあることのはず)、カイラー・リーの繊細な演技(キスされた後のあの笑顔! えくぼ! そして2度めのキスで見せる積極性!!!!)等々、今後「レズビアン・ロマンスのラブシーン、オールタイムベスト10」が作られるときには必ずやランクインし続けること間違いなしと思えるできばえでした。映画『キャロル』のウォータールーのシーンとどっちが良かったかと訊かれたら、正直あたしは選べません。それぐらい素晴らしかった。

アレックスの失恋が実質2週間で終了したことには驚かざるを得ませんが、ここまで激しい起伏で視聴者を振り回してもプロットの説得力が目減りしないのは、構成が考えつくされているからだと思います。たとえば、今回のエピソードの半ばに出てくる、けがをしたマギーの傷口をアレックスが縫う場面をご覧あれ。縫合が終わった後、大丈夫かと聞くアレックスに、マギーは笑いながらこう軽口をたたくんです。

「ああ、あたしは大丈夫、あんたがこれがあまり上手じゃないからちょっと緊張しただけ」

Oh, I'm okay, just a little nervous that you're not very good at this.

「傷」と「縫合」が何の象徴であるかに気付けば、マギーの言う「緊張」がS2E6のバーの場面で彼女が言っていたことの暗示だということも読み取れるはず。そこで今、笑顔で「大丈夫」と言っているということは? そう、マギーの中ではこの時点でもう、この恋へのGOサインが出ているんです。

キスシーンのBGMにリタ・オラの"Coming Home"(アコースティックバージョン)が使われていたのも、絶対に偶然ではないはず。先ほど書きましたが今回は感謝祭のお話で、感謝祭とはホームに帰るイベントです。"Coming Home"の切ない歌詞と、キスシーンの最後の瞬間にかぶさるリフレインの部分は、ふたりが今ついに自分の居場所に、つまりホームに帰ってきたことを表しているのだと思います。ということは結局、サンバース(アレックスとマギーのカップリング)の恋の成就をこの回に持ってきたこと自体、よくよく計算された上でのことだったのでは。本番組の放送局CWは別のドラマであたかもレズビアンキャラを殺さないように見せかけておいてからあっさり殺した前科があるので、まだ油断はできませんが、まずはここまでの流れに大拍手を贈りたいと思います。

その他の(レズビアン的な)見どころ

  • アレックスから母イライザ・ダンバース(ヘレン・スレイター)へのカミングアウトの流れがユニークでした。アレックスが緊張のあまりついつい酒を飲み過ぎてしまうくだりがリアルでかつ愛らしいし、イライザの反応もビューティフル。メインストリームのドラマにこういう表現があるのって、重要だと思うわ。ヘレン・スレイターは1984年の映画版スーパーガールで主役を演じた人なので、結果として「旧世代のスーパーガールがクィアな新世代をembraceしている」という構図になっているところもとてもいいと思います。
  • カーラ(メリッサ・ブノワ)のヘテロ恋愛の進み具合がやっつけ仕事の大味なハイスクールドラマにしか見えない一方、レナ・ルーサー*1(ケイティ・マクグラス)とカーラの間のサブテキストがいよいよ恋愛めいているところが気になります。ケイティ・マクグラスはドラマ『Dates』や『Dracula』などでのレズビアン役で定評がある人で、『スーパーガール』でも以前からカーラとのケミストリーが話題になっていたのですが、ひょっとしたらこの先バイセクシュアルの三角関係が出てきたりするんでしょうか。だとしたら、うれしいな。

余談

今回はガーディアンが(あまり)しゃしゃり出て来ず、ほっとしました。このままずっと出て来なくていいよ。

まとめ

これまで何度かアレックスの恋路をローラーコースターになぞらえてきましたが、この緩急の強烈さはもはやツール・ド・フランスの山岳ステージと呼んだ方が近いかもしれません。アレックスとともに心拍数を激動させながらここまで走り切った視聴者たち全員が、マイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュ(山岳ステージの覇者に与えられる名誉あるジャージ)をもらってもいいと思うわ。それぐらい大変なことになってるわ。キスシーンまでの流れも完璧だったことですし、"Life is..."で始まるマギーの名台詞をマントラのようにソーシャルメディアに書き込んで喜んでいる全世界のレズビアン視聴者ズ*2と共に、シャンパンでも開けて祝いたい気分です、今。

おまけ

今回のエピソードの放送日にカイラー・リーがInstagramに上げたサンバース写真。キャプションがすべてを物語っています。


追記(2016年12月3日)

カイラー・リーがまたしてもファンを萌え殺しに来てます。1度めのキスと2度目のキスの間のこの演技についての、Twitter上でのやりとりをごらんください。

訳:「本当に大事な質問なんですけど、髪を直すところは脚本にあったのですか?」。


訳:「#即興です 彼女、すばらしい髪をしてるの」。

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*1:英語の発音だと『リーナ・ルーサー』ですが、アメコミ界などでは以前から『レナ』と訳されているようなので、ここではそれに合わせた表記にしておきます。

*2:でも日本ではまだ(2016年12月現在)、シーズン2は放映されてないんですよね……。DL販売で英語版なら視聴できるとは言え、国内と国外のタイムラグが悲しいので、早いとこ日本でも放映または配信してほしいです。