石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

マギーさんやっぱり鬼や―ドラマ『スーパーガール』2x06感想

ポスター/スチール 写真 A4 パターンV スーパーガール 光沢プリント

あまりの起伏に叫びまくり

アレックスからカーラへのカミングアウト回。前回の感想で「腰が抜けそうな急展開」と書きましたが、今回も「ローラーコースターの終点で降りたと思ったら、そこはバンジージャンプ会場だった」ぐらいの起伏が待ち受けており、素で3回ぐらい叫びました。

ダンバース姉妹最高

シーズン1以来ずっと、このドラマには「自分とは何者なのか」というテーマが根底に流れています。アレックス・ダンバース(カイラー・リー)が自分のセクシュアリティを自覚し、カミングアウトするのもそのテーマの一環のはず。今回は相手が妹のスーパーガール/カーラ(メリッサ・ブノワ)なので、返ってくる反応は以下のどちらかなんじゃないかと視聴前には思ってました。

  1. 「自分はずっと正体を隠してきて、恋もできないと悩んできたのに、なぜ姉は違うのか」的な困惑を見せる?
  2. 以前から他者との共存に重きを置いているカーラらしく、最初から諸手を上げて味方になる?

結論を先に言うと、S2E6のプロットはこれらの凡庸な予想を軽々と飛び越えてくるものでした。上記1も2も100%ハズレというわけではなかったものの、カーラの反応や台詞にその両方を上回るだけのひねりとリアリティがあるんですよ。ソファーでの会話場面でのカーラの発言は名台詞の目白押しで、最後にアレックスに投げかけるちょっとユーモラスなことばが特に光ってました。家族にカミングアウトしてこういう風に反応してもらえるというのは、ひとつの理想かと思います。最高すぎるわ、ダンバース姉妹。

カイラー・リーが殺しに来てる

カイラー・リーの演技力の高さについては前回も触れましたが、今回はもう完全にファンを萌え殺しに来ているとしか思えません。ぎこちなく、かつ懸命にカーラにカミングアウトしようとする場面のいじらしさや、これまで抑え込んできた記憶に気付いていくところの初々しさと痛々しさ、カーラからマギーについて聞かれたとたんに恋するティーンエイジャーと化して目をキラッキラさせながら語り出してしまう愛らしさなどなど、どれをとってもいちいち見ているこちらの心臓が止まりそうでした。

これを全部、以前からの「知的で強い保護者のお姉ちゃん」像とは全然矛盾しないかたちでやってしまうという点が、またすごいよね。「キャラの新たな側面を見せる」というのは物語を前に進める原動力のひとつですが、カイラー・リーは表情だけでそれがやれてしまう役者さんだと思います。

そしてマギーさんは鬼(でも、責められない……!)

上記の通り、アレックスからカーラへのカミングアウトは成功に終わるのですが。終盤のバーの場面でのマギー・ソウヤー刑事(フロリアナ・リマ)が鬼。その直前に出てくる、レズビアン的に大変うれしいご褒美シーンの高揚を全部ひっくり返す勢いで鬼。この記事の冒頭で書いた、「素で3回ぐらい叫んだ」場所のひとつが、まさしくここです。

ただ、いちレズビアンとしては、ここでのマギーさんの判断を一概に責められないとも思うんですよ。賭けてもいいけど彼女、過去に似たようなシチュエーションで大火傷したことがあるはず。ものすごくよくあることですから。あたしにもあったぐらいですから。現在のアレックスのような状況にあるレズビアンを指す、"baby dyke"という言い回しまであるぐらいですから。

それと同時に、アレックスの痛みもまたわかりすぎるほどわかるのが、余計につらかったりもします。ヘテロならもっと幼いうちにそれこそいわゆる"puppy love"から始めて、思春期の実体験や、友達の「恋バナ」や、テレビや漫画や小説などでの疑似体験を通して少しずつ学習できたであろうことを、レズビアンだとこんな風に一度に全部受け止めなきゃいけないことがあるんですよね。レズビアンの恋の障害は外から見てわかりやすい「世間の偏見や無理解」だけではなく、実際にはこうしたより複雑で微妙な困難もいろいろあるんです。そこまで踏み込んで、ふたりをよりrelatableな(って、日本語でなんて言うんでしょうか。『共感しやすい』? 『自分のことのように感じられる』?)存在として描いてみせたことには、素直に拍手を送りたいです。

ちなみに、この場面の衝撃に打ちのめされたあたしが頭の片隅ですがるように考えていたのは、「アレックスにカーラがいてくれてよかった」ということでした。思えば、このオチが用意されていたからこそ、カーラへのカミングアウトをあそこまで丁寧に描写しておいたんだろうなあ。あああ。やられた。読めなかったわこれは。

まとめ

第2シーズン開始前、アレックスとマギーが恋に落ちるのではという噂がささやかれていたとき、Twitterに「罠だ("That's bait.")」という『マッドマックス怒りのデス・ロード』の一場面のGIFを貼ってた人がいましたっけ。ドラマなどで少なからず使われる、「同性同士のロマンスが始まりそうな気配を餌にさんざん視聴者を引っ張ったあげく、結局何も起こらないまま終わらせる」という手法、すなわち「クィアベイティング("queer baiting")」を警戒しろという意味だと思います。S2E5までを見た段階では、「そこまで警戒しなくてもよかったのでは」と思っていましたが、この第6話を見てしまった今となっては、なかなかそうも言いきれなくなってきたような。少なくともサンバース(マギーとアレックスの苗字から作られたカップリング名)の動向に主眼を置いて見ていると心臓に大変悪いことだけははっきりしたので、今後は「サンバースよりダンバース姉妹。ダンバース姉妹さえ仲良しで幸せならばそれでよし」と念仏のように唱えながら視聴にいそしむつもりです。

おまけ

ダンバース姉妹近影。いいの、もうこのふたりさえ幸せなら。

SUPERGIRL/スーパーガール 〈ファースト・シーズン〉 コンプリート・ボックス(3枚組) [Blu-ray]

SUPERGIRL/スーパーガール 〈ファースト・シーズン〉 コンプリート・ボックス(3枚組) [Blu-ray]

SUPERGIRL/スーパーガール <セカンド・シーズン>ブルーレイ  コンプリート・ボックス(4枚組) [Blu-ray]

SUPERGIRL/スーパーガール <セカンド・シーズン>ブルーレイ コンプリート・ボックス(4枚組) [Blu-ray]

ドラマ『スーパーガール』関連記事