石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

スーパーガール(のアレックス)、またしても少女を助ける。しかも、現実世界で

The Adventures of Supergirl (2016) Vol. 1

米国インディアナ州のコミック書店員、メアリー(@sapphicgeek)さんが、ある日お店で起こったすばらしいことをTwitterで報告しています。創作作品におけるLGBTのキャラ表象が大切なのは、こういうことがあるからなんだよ!

メアリーさんの一連のツイートは、以下から読むことができます。

https://twitter.com/sapphicgeek/status/805146210235518976

手っ取り早く読みたい方のため、以下にざっくり日本語化してみました。

1.


訳:「今日店で起こったことを全部話したいと思います。これはたぶん、ここで働いてきて経験した中でいちばんすばらしかったこと」

2.


訳:「いつもの土曜日の混み具合がおさまった後、10代の女の子が来店。すごく怯えた顔をしていて、わたしがあいさつすると飛び上がってしまう」

3.


訳:「その子は新刊の棚の前を行ったり来たりしていて、気の毒なことに、困り果てている感じ」

4.


訳:「それでわたしが近づいていって、何かお探しですかと尋ねると、『スーパーガール』を探しているんです、と小さな声で言う」

5.

訳:「ふたりでスーパーマンとスーパーガールのコーナーに向かいながら、(スーパーガールの)ドラマを見ているのですかと訊いてみる。彼女はわずかに微笑んでうなずき、アレックス(訳注:ドラマ『スーパーガール』S2でレズビアンとしてカミングアウトしたキャラ)がお気に入りだと言う」

6.


訳:「『わたしはサンバース(訳注:『スーパーガール』のキャラ、アレックスとマギーの女性同士のカップルのこと)の大ファンですよ』と告げると、かわいそうに、その子は突然泣き出してしまう」

7.


訳:「この子を動転させるなんて、わたしいったい何をしちゃったんだろう。この子泣いてる、どうしよう」

8.


訳:「1分ぐらいして、何もかもピンとくる。わたしは今、涙にくれるベイビー・ゲイ(訳注:カミングアウトしたばかりの、または若い同性愛者のこと)を見てるんだ。そして、この子は何か大変な問題を抱えているんだ」

9.


訳:「わたしもカミングアウトしたいと思ったときは大変でしたよ、とその子に言ってみる。彼女はしまいに泣き止んで、これってもっと楽になるんでしょうかとわたしに尋ねる」

10.


訳:「ふたりでコーヒー・バーに行き、しばらく座って話す。女の子はTumblr中でスーパーガール(の名場面など)を見た後、ドラマを一気に見たのだと言う」

11.


訳:「それで、アレックスのカミングアウトの一連のエピソードを見たときに、いろいろ思い当たることがあったんだって」

12.


訳:「長いこと自殺したいと思っていて、自殺未遂で体調を崩したこともあるんだって」

13.


訳:「でもアレックスのエピソードが続いていくにつれ、自分も幸せになれるかもしれない、人から愛されるかもしれないと思ったんだって」

14.


訳:「彼女はもう死にたいとは思っていませんでした。『アレックスがすばらしい人で、クィアであるところを見なくては』という理由で、初めて死にたくないと思ったとのこと」
15.
訳:「お店に来たのは、またうつ状態に戻ってしまわないよう、(シーズン2の前半と後半の間の)空白期間を乗り切るためのものを見つけたいと思ったからなんだそうです」

16.



訳:「彼女はコミックの世界で同性愛者のキャラが流行っているとは全然知らなかったけれど、読んでみたいと言いました。わたしはバットウーマンや、ミッドナイターや、レニー・モントーヤのことを教えてあげました」

17.


訳:「わたしは初心者向けの作品を、つまり"Batwoman: Elegy"や、"Midnighter"や、"Gotham Central"を引っ張り出しました」

18.


訳:「"Adventures of Supergirl"も掘り出しました。とにかく彼女を助けたくて(笑)」

19.


訳:「その子は1冊分のお金を持っていて、どれを買うかものすごく迷っていました。バットウーマンに決めて、残りはしばらく取り置きにしてもらえるかと聞いてきました」

20.


訳:「その時点でわたしの心の中は危機に陥ってました。この子は何年か前のわたし自身でしたから。涙がこぼれないようにするのがやっとでした」

21.


訳:「結局わたしは彼女にバットウーマン以外の3作品を買ってあげて、彼女が10年後に他のクィアな子供を助けることを約束させました」

22.


訳:「わたしは60ドル使い、トイレで1時間泣きましたが、その甲斐は絶対にありました」

23.


訳:「そんなわけで、CWのスーパーガール、スーパーガールのスタッフ、カイラー・リー、そしてフロリアナ・リマ、あなたがたの作品はわたしたちにとって、とても大きな意味を持っているのです。ありがとう、ほんとうにほんとうにありがとう」

ツイートは以上です。

こういう話、もうほんとに他人事じゃないんで、読んでて涙が出ます。こういう現象は昔からあって、エレン・デジェネレスが90年代にシットコムでカミングアウトしたときも、『Glee』でサンタナがブリタニーとカップルになったときも、『オーファン・ブラック』でタチアナ・マズラニーがレズビアンのキャラ、コシマを演じたときにも、それによって救われた女の子がたくさんいました。フィクションは、大げさでなく人の命を救い、人生すら変える力を持っています。そして、ロールモデルが少ないマイノリティにとっては、自分と同じ属性を持つキャラの表象が与えるインパクトは特に重要。『スタートレック』の黒人女性キャラ、ウフーラがウーピー・ゴールドバーグをして女優を志させ、メイ・ジャミソンに米国初の黒人女性宇宙飛行士への道を歩ませたのが、そのいい例です。

日本ではまだ、フィクションの中に同性愛者のキャラが出てきて、しかもとりたてて嘲笑や憐憫のターゲットとしては描かれていない場合、「なぜ『わざわざ』キャラを同性愛者にするのか」、「『無理やり』ゲイにするな」などと文句を言う人が少なからずいるようです。しかし、同性愛者であるあたしに言わせれば、これでは順番が逆です。(1)人間はシスヘテロばかりではないはずなのに、「わざわざ」、そして「無理やり」、登場人物を全員シスヘテロと設定するフィクションが氾濫しすぎているという現実がまずあり、(2)そのせいで非シスヘテロの子供たちが「自分みたいな人はどこにもいないんだ、自分には幸せな未来はないんだ」と思い込まされてしまうという害が生じていて、(3)それに対する反省と改善がようやく進みつつあるのが今という時代だと思います。ドラマ『スーパーガール』のレズビアンキャラ、アレックスの物語が女の子が好きな女の子たちを力づけた例はこれまでにもいくつか紹介しましたが、(例1例2)、そこにもうひとつ今回の報告が加わったことを、あたしはとてもうれしく思っています。

そうそう、今回のメアリーさんのツイートに対して、アレックス役の女優、カイラー・リーがTwitterでとてもいいことを言っていたので、それも紹介しておきます。

訳:「最高。この@sapphicgeekのスレッドをぜひ読んで。現実世界のスーパーガールとは、こういうものなんですよ。必要なのは、愛と敬意と親切だけ」

訳:「@sapphicgeek メアリー……この話。これこそが、ヒーローとは何たるかを示すものです。あなた最高です! 心から敬服し、このツイートをシェアします!」

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