石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

スナッパーがいいこと言ってる―ドラマ『スーパーガール』2x15感想

ポスター/スチール 写真 A4 パターン10 スーパーガール 光沢プリント

スナッパーが大変良い回。モン=エルのひどさと好対照

カドマスに拉致された異星人を救う回。カーラの嫌味な上司、スナッパーのジャーナリズムに関する発言が的確で、面白かったです。サンバースの描写もおおむねいい感じ。でもモン=エルの鬱陶しさはそろそろ限界レベルかも。ヘテロはあれ見て怒らないの?

スナッパーが面目躍如

いつもカーラ(メリッサ・ブノワ)に冷たく当たる気難しい上司、スナッパー(イアン・ゴメス)が珍しくいいこと言うんですよ。カドマスの陰謀について報じてほしい、情報源は言えないが嘘じゃないと訴えるカーラ/スーパーガールに対し、彼は断固として情報のソースを要求し、こんなことを言うんです。

フェイクニュースがあまりにも出回りすぎている。危険は冒せない。

"Way too much fake news out there. I can't risk it.

「人の命がかかっている」とか、「問題なのは誰が言ったかではなく何が起こっているかだ」とかいうカーラ/スーパーガールの主張にも、スナッパーは折れません。

うちはこの街の「信頼に足る新聞」なんだ。今後はどんな引用ひとつにも、それが正確だという証明になる別個の情報源を最低ふたつは持ってこい。誰の命がかかっていようともだ。

We're paper of record in this town. From now on, you need at least two independent sources verifying every single quote, no matter whose life is at stake.

わたしはジャーナリストだ。ジャーナリストというのは、「この人は嘘をついていない」と証明できるまでは、すべての人が嘘をついているという前提に立つものなんだ。

You're talking to a journalist. We believe everyone is lying until we can prove they're not.

ネットで拡散された偽ニュースが2016年米大統領選に与えた影響や、それに対する既存メディアの責任などが議論されている昨今、ジャーナリストのみならずすべての人が噛みしめなければいけない言葉だと思います。

スナッパーがイディッシュ語でさらにぶつぶつとつぶやいた後、こんな説明を付け加える場面もよかった。

わたしの祖母がユダヤ人の小村でよく言っていたように、「半分の真実は真っ赤な嘘」なんだ。アメリカの大衆はすべての真相を知る権利がある。ダンバース、もし出所不明のソースしか示せないのなら、そのニュースはもう死んでるんだ。

As my grandmother used to say in the shtetl, "A half-truth is a whole lie." The American public has a right to know the whole truth, Danvers. And until you can provide me with more than NFA source, the story is DOA."

つまり彼はユダヤ系なわけですよ。今回の『スーパーガール』冒頭では異星人の移民一家が突然出先でさらわれて強制収容されるところが描かれていますが、こうなるとそれは現在の米国で移民たちが受けている仕打ちのみならず、スナッパーのおばあちゃん世代が受けた苦難とも被ってくるわけ。ここまで見てくると、彼が言う「すべての真相を知る権利」という言葉が、さらに重みを帯びてきます。単なるデニッシュパン好きの不機嫌な中年じゃなかったのね、スナッパー。見直したわ。

今週のサンバース

アレックス(カイラー・リー)とマギー(フロリアナ・リマ)のレズビアンカップル、通称サンバースは愛もヒーロー活動も順調。ふたりとも銃撃戦あり格闘ありの華々しいアクションを繰り広げている上に、キスシーンもごくカジュアルに披露しています。ふたりがキスするところに居合わせたエイリアンのブライアンがとある台詞をうれしそうにつぶやく場面では、全世界のサンバースファンが「そうだそうだ」と心をひとつにしたことでありましょう。

ちょっと気になったのは、アレックスが感情に流されて規則違反行為に走る場面が2か所もあること。自分の感情を抑圧しないということと、無責任にルールを破るということは別ものであるはずなので、そのへんの書き分けにもう少し工夫があってもいいのではと思いました。

モン=エルとカーラの知能

ここ数話のあいだ、カーラとモン=エル(クリス・ウッド)のヘテロ恋愛に感じていたもやもやを、Autostraddleのこの回のリキャップのコメント欄にあったこちらの意見が見事に言語化してくれていました。

スーパーガールでイライラするのは、これって4分の3はベクデルテスト的にすばらしい番組で……

……で、モン=エルがうろちょろしているのが残りの4分の1だということ。モン=エルが周りにいると、カーラの知能指数が50ぐらい下がって、プロットはほぼ全部モン=エルを中心にして回り始める。

The frustrating thing about Supergirl, is it’s about 3/4ths a great Bechdel-riffic show… …and then there’s the 1/4th when Mon-El’s around. Kara’s IQ drops about 50 points, and just about the entire plot starts to devolve around HIM.

これって真実を衝いてると思うんですよねえ。特に今回はこの傾向がひどくて、カーラはモン=エルに背中を押されてある軽率な行動に走り、シーズン1からずっと大切にしていたものを失って、にもかかわらずエピソード終盤ではモン=エルに向かってうっとりと「スーパーガールでいられてあなたがいればそれで充分」などと口走ったりしています。カーラのこの告白をにやにやしながら聞いてるモン=エルの表情は、もはや「恋人を操作して好きなものをあきらめさせ、自分にだけ注意を振り向けさせようとしているクズ男の勝利の笑み」にしか見えません。

なんでこんなものが「ふたりのロマンチックな瞬間」的な位置づけで提示されている(BGMはBootstrapsの"Everywhere")のか理解できませんし、ヘテロの方々はこの一連の流れに「ヘテロ女性やその恋愛をこんなひどい形でリプリゼンテーションするな」と怒っていいぐらいだと思います。それとも、いちいち怒らなくても他の作品でいくらでもすばらしい表象が見られるから大丈夫なのかしら。まさかとは思うけど、異性愛者の間では奥村チヨの「恋の奴隷」(またはジョージア・ギブスの"Kiss of Fire")的な価値観がいまだに大流行してるなんてことはないよね?

まとめ

今シーズンの一番のネックはモン=エルかも。モン=エルのストーリーラインって、番組が今シーズンからCWに移ったのを機に「心機一転、主人公をイケメン白人と恋愛させてティーン視聴者をキャーキャー言わせましょう!」という意図で用意されたものだと思ってたんですが、それにしてはあちこち描写が杜撰すぎると思います。もっとカーラがスナッパーからの叱責で成長するところとか描いてよ、夢を放り出してあんな無精ひげ野郎にしなだれかかる共依存ガール化させるんじゃなくてさ。だいたいシーズン2の後半は、サンバースが話の中心だった前半(S2E8"Medusa"まで)より視聴率が落ちてるみたいですし、明らかにウケてないと思うのよ今の路線。

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