石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

「娘」でもなく「息子」でもなく。お父さんがノンバイナリーのわが子を呼称で尊重

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スペイン語圏の人気YouTuberでノンバイナリーのTefy ‘Seducememujer’ さんが、お父さんが自分のことをノンバイナリーの子どもとして尊重してくれた瞬間の動画を公開しています。これは感動、単語ひとつで涙出る。

紹介は以下。

escandala.com

動画を紹介する前にちょっと補足説明しておくと、スペイン語は名詞や形容詞がジェンダーによって変化することばです。そして、基本的には指示対象が男なら語尾がo、女ならaになります。

たとえば、英語なら「猫」は雄でも雌でも"cat"ですが、スペイン語では雄猫は"gato"、雌猫は"gata"。そして、スペイン語で「息子」は"hijo"(イホ)、「娘」は"hija"(イハ)。じゃあ、親はノンバイナリーの子のことを何と呼んだらいいのかって? その答えが、今回Tefyさんが「人生でいちばん幸せな瞬間のひとつ」として発表した以下の動画の、0:05ぐらいのところに出てくるんですよ!

この動画は、TefyさんとTefyさんのお父さんの、ライブ配信中の会話の一部分です。そして動画冒頭で、お父さんはにこにこしながらこんなことを言うんです。

「『父とhije(イヘ)』としての関係とは無関係に、わたしたちはすばらしい友達だよ」

"Somos excelentes amigos, independientemente de nuestra relación de padre e hije"

hijo"(イホ)でも"hija"(イハ)でもなく、"hije"(イヘ)って言ってる! しかも、すごくはっきり!

このように語尾をeにするというのは、辞書には載ってなくてもノンバイナリーの人たちは既に使い始めている、男性ジェンダーにも女性ジェンダーにも当てはまらない言い回しです。お父さんがこの語を口にしたとたん、Tefyさんは破顔一笑し、それから少し涙ぐんでいます。

Tefyさんは三年以上前からノンバイナリーのアイデンティティーを持っている人。過去にはお父さんとひどく衝突して、おそらくうまくいくことはないだろうと思っていた時期もあるのだそうです。しかし今では関係が回復し、「親友」としてのお父さんに心中を打ち明けられるようになっているとのこと。今回そのお父さんから"hije"と呼んでもらえて、「常にわたしのヒーローであるパパと夢の関係を築いていると、感動と感謝でいっぱいの気持ちで言うことができる」と、TifaさんはInstagramで説明しています。

これまでフランス語やスペイン語を勉強してきて、「こういう性一致の傾向が強い言語圏で、トランスやノンバイナリーの人たちはどうしているのだろう」と思っていたのですが、こうやって変えていこうという動きがあり、それを(衝突の末にせよ)支持する家族もいるんですね。いいもん見させてもらったわー、ありがとうありがとう。