Netflixオリジナルアニメ『リドリー・ジョーンズの冒険』(原題:Ridley Jones)のクリエイター、クリス・ニー(Chris Nee)が、Netflixが同番組の最終シーズンの宣伝をせず「ひっそりと捨てた("quietly dumped")」と主張しています。この最終シーズンにはノンバイナリーのキャラがカミングアウトする場面があり、保守派から強い反発を受けていました。
『リドリー・ジョーンズの冒険』は、「夜になると、きょうりゅうやミイラたちが動き出すふしぎなミュージアム」が舞台の子供向けアニメ。ノンバイナリーのキャラはバイソンのフレッドで、生まれたときにつけられた名前は「ウィニフレッド」です。フレッドのノンバイナリー性は以前から描写されており、たとえばシーズン2(2021)には、プロム用のドレスが好きになれないフレッドがスーツを着てみて「自分らしい」と喜ぶという場面があります。ここの歌詞、すごくいいです。
で、このフレッドが、2023年3月6日にリリースされた最新シーズン(シーズン5)の第8話で、祖母のドッティ(声はなんとシンディ・ローパー*1)に対して以下のようにカミングアウトするんです。(以下、Netflixジャパンの英語&日本語吹き替え音声*2より書き起こして引用)
「それで、心が言ってるんだ、自分がいちばん自分らしくいられる名前は『フレッド』だと。『女』でも『男』でもなく、『フレッド』がいちばん合ってると思う。だから『フレッド』って呼ばれたい、自分のことを『彼女』や『彼』って言われるのはおかしい気がして」
"Well, my heart says that the way I feel most myself is to go by the name Fred. That's because I’m non-binary, and Fred is the name that fits me best. And I also use they and them because calling me a she or a he doesn't feel right to me."
で、おばあちゃんはこんな風に答えます。
「まあ。全然知らなかった。調子が出なかったのも当然よ、自分らしくないままで群れを率いるのは無理。ずっと名前をまちがえてて、本当にごめんなさい。伝えてくれてありがとう」
"Oh, I didn't know that. No wonder you've been strrugling. How could you lead the herd without being yourself. I'm sorry I used the wrong name and pronouns. Thank you for showing me your heart."
動画はこちらをどうぞ。
With everything going on, this feels like it was written in a totally different time period. I’m so glad that Fred and their grandma were able to positively model talking about name and pronoun changes! pic.twitter.com/uYHNMH8cgm
— Mia Resella (@MiaResella) March 10, 2023
これを見た保守派視聴者層はソーシャルメディアに「子供たちを混乱させる」だの「洗脳だ」だの「もうNetflixを解約する」だのという投稿をしまくり、Foxニュースのコメンテーターは「Netflixの新しい番組が、子供たちに性別と代名詞を疑問視しろと言っている……気持ち悪すぎる」などと主張。そしてNetflixはこうしたバックラッシュのさなか、最終シーズンとなる第5シーズンのプロモーションを一切せずに同番組を終了させてしまったのだそうです。製作者のクリス・ニー(『ドックのおもちゃびょういん』や『バンピリーナとバンパイアかぞく』を手掛けた人でもあります)は、そのことについて「驚きはしない」とTwitterで表明しています。
Doesn't surprise me that Netflix has quietly dumped the first preschool show that has a non-binary character coming out. Ridley Jones 5 episode Happy Herd Day Fred tells their Grandma played by #CyndiLauper that they've changed their name and pronouns. Watch it. Tweet about it. pic.twitter.com/IUQ05ftshb
— Chris Nee (She/Her)🏳️🌈 (@chrisdocnee) March 8, 2023
そして、「なぜトランスやLGBTQキッズへのサポートが必要なのか知りたければ、わたしのツイートへのリプライを見てみてください。あと、『リドリー・ジョーンズの冒険』も全部見てね。Netflixで。配信中です」とも。
If you want to know why trans and LGBTQ kids need our support just look at the replies in my tweets. Also, enjoy all the episodes of Ridley Jones. On Netflix. They are available to watch.
— Chris Nee (She/Her)🏳️🌈 (@chrisdocnee) March 16, 2023
そして実際、クリス・ニーのこのツイートそのものに、トランスフォビア扇動者が好んで使う用語を使ったヘイトツイートがぶら下がってたりするんですよ。こんな風に憎悪の嵐が吹き荒れているからこそヴァルネラブルな立場に置かれた人々へのサポートは必要だし、『リドリー・ジョーンズの冒険』みたいな子供向け作品も必要なのに、冷たすぎるよなNetflix。そんなわけで「ネトフリが宣伝しないのなら、微力ながらも『こういうアニメがありますよ』と世に伝えようではないか」と思い、このエントリを書いてみました。このアニメ、パパが2人いる女の子の歌なんかもあったりしていろいろ画期的なので、見られる環境にある方はぜひ。