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石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャー。

スナッパーがいいこと言ってる―ドラマ『スーパーガール』2x15感想

ドラマ 百合/レズビアン

ポスター/スチール 写真 A4 パターン10 スーパーガール 光沢プリント

スナッパーが大変良い回。モン=エルのひどさと好対照

カドマスに拉致された異星人を救う回。カーラの嫌味な上司、スナッパーのジャーナリズムに関する発言が的確で、面白かったです。サンバースの描写もおおむねいい感じ。でもモン=エルの鬱陶しさはそろそろ限界レベルかも。ヘテロはあれ見て怒らないの?

スナッパーが面目躍如

いつもカーラ(メリッサ・ブノワ)に冷たく当たる気難しい上司、スナッパー(イアン・ゴメス)が珍しくいいこと言うんですよ。カドマスの陰謀について報じてほしい、情報源は言えないが嘘じゃないと訴えるカーラ/スーパーガールに対し、彼は断固として情報のソースを要求し、こんなことを言うんです。

フェイクニュースがあまりにも出回りすぎている。危険は冒せない。

"Way too much fake news out there. I can't risk it.

「人の命がかかっている」とか、「問題なのは誰が言ったかではなく何が起こっているかだ」とかいうカーラ/スーパーガールの主張にも、スナッパーは折れません。

うちはこの街の「信頼に足る新聞」なんだ。今後はどんな引用ひとつにも、それが正確だという証明になる別個の情報源を最低ふたつは持ってこい。誰の命がかかっていようともだ。

We're paper of record in this town. From now on, you need at least two independent sources verifying every single quote, no matter whose life is at stake.

わたしはジャーナリストだ。ジャーナリストというのは、「この人は嘘をついていない」と証明できるまでは、すべての人が嘘をついているという前提に立つものなんだ。

You're talking to a journalist. We believe everyone is lying until we can prove they're not.

ネットで拡散された偽ニュースが2016年米大統領選に与えた影響や、それに対する既存メディアの責任などが議論されている昨今、ジャーナリストのみならずすべての人が噛みしめなければいけない言葉だと思います。

スナッパーがイディッシュ語でさらにぶつぶつとつぶやいた後、こんな説明を付け加える場面もよかった。

わたしの祖母がユダヤ人の小村でよく言っていたように、「半分の真実は真っ赤な嘘」なんだ。アメリカの大衆はすべての真相を知る権利がある。ダンバース、もし出所不明のソースしか示せないのなら、そのニュースはもう死んでるんだ。

As my grandmother used to say in the shtetl, "A half-truth is a whole lie." The American public has a right to know the whole truth, Danvers. And until you can provide me with more than NFA source, the story is DOA."

つまり彼はユダヤ系なわけですよ。今回の『スーパーガール』では冒頭から異星人の移民一家が突然出先でさらわれて強制収容されるところが描かれていますが、こうなるとそれは現在の米国で移民たちが受けている仕打ちのみならず、スナッパーのおばあちゃん世代が受けた苦難とも被ってくるわけ。こうなってくると、彼が言う「すべての真相を知る権利」という言葉が、さらに重みを帯びてきます。単なるデニッシュパン好きの不機嫌な中年じゃなかったのね、スナッパー。見直したわ。

今週のサンバース

アレックス(カイラー・リー)とマギー(フロリアナ・リマ)のレズビアンカップル、通称サンバースは愛もヒーロー活動も順調。ふたりとも銃撃戦あり格闘ありの華々しいアクションを繰り広げている上に、キスシーンもごくカジュアルに披露しています。ふたりがキスするところに居合わせたエイリアンのブライアンがとある台詞をうれしそうにつぶやく場面では、全世界のサンバースファンが「そうだそうだ」と心をひとつにしたことでありましょう。

ちょっと気になったのは、アレックスが感情に流されて規則違反行為に走る場面が2か所もあること。自分の感情を抑圧しないということと、無責任にルールを破るということは別ものであるはずなので、そのへんの書き分けにもう少し工夫があってもいいのではと思いました。

モン=エルとカーラの知能

ここ数話のあいだ、カーラとモン=エル(クリス・ウッド)のヘテロ恋愛に感じていたもやもやを、Autostraddleのこの回のリキャップのコメント欄にあったこちらの意見が見事に言語化してくれていました。

スーパーガールでイライラするのは、これって4分の3はベクデルテスト的にすばらしい番組で……

……で、モン=エルがうろちょろしているのが残りの4分の1だということ。モン=エルが周りにいると、カーラの知能指数が50ぐらい下がって、プロットはほぼ全部モン=エルを中心にして回り始める。

The frustrating thing about Supergirl, is it’s about 3/4ths a great Bechdel-riffic show… …and then there’s the 1/4th when Mon-El’s around. Kara’s IQ drops about 50 points, and just about the entire plot starts to devolve around HIM.

これって真実を衝いてると思うんですよねえ。特に今回はこの傾向がひどくて、カーラはモン=エルに背中を押されてある軽率な行動に走り、シーズン1からずっと大切にしていたものを失って、にもかかわらずエピソード終盤ではモン=エルに向かってうっとりと「スーパーガールでいられてあなたがいればそれで充分」などと口走ったりしています。カーラのこの告白をにやにやしながら聞いてるモン=エルの表情は、もはや「恋人を操作して好きなものをあきらめさせ、自分にだけ注意を振り向けさせようとしているDV男の勝利の笑み」にしか見えません。

なんでこんなものが「ふたりのロマンチックな瞬間」的な位置づけで提示されている(BGMはBootstrapsの"Everywhere")のか理解できませんし、ヘテロの方々はこの一連の流れに「ヘテロ女性やその恋愛をこんなひどい形でリプリゼンテーションするな」と怒っていいぐらいだと思います。それとも、いちいち怒らなくても他の作品でいくらでもすばらしい表象が見られるから大丈夫なのかしら。まさかとは思うけど、異性愛者の間では奥村チヨの「恋の奴隷」(またはジョージア・ギブスの"Kiss of Fire")的な価値観がいまだに大流行してるなんてことはないよね?

まとめ

今シーズンの一番のネックはモン=エルかも。モン=エルのストーリーラインって、番組が今シーズンからCWに移ったのを機に「心機一転、主人公をイケメン白人と恋愛させてティーン視聴者をキャーキャー言わせましょう!」という意図で用意されたものだと思ってたんですが、それにしてはあちこち描写が杜撰すぎると思います。もっとカーラがスナッパーからの叱責で成長するところとか描いてよ、夢を放り出してあんな無精ひげ野郎にしなだれかかる共依存ガール化させるんじゃなくてさ。だいたいシーズン2の後半は、サンバースが話の中心だった前半(S2E8"Medusa"まで)より視聴率が落ちてるみたいですし、明らかにウケてないと思うのよ今の路線。

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『カーミラ』のナターシャ・ネゴヴァンリスがファンズ・チョイス賞受賞 スピーチが感動的だよ!

LGBTニュース 百合/レズビアン ドラマ 映画

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アカデミー賞のカナダ版、カナディアン・スクリーン賞の第5回授賞式で、Webドラマ『カーミラ』のナターシャ・ネゴヴァンリス(Natasha Negovanlis)がファンズ・チョイス賞に輝き、クィアなコミュニティに向けたすばらしいスピーチを披露しました。

詳細は以下。

This Actress Gave A Speech Reminding Everyone Why Queer Representation Matters - BuzzFeed News

ナターシャ・ネゴヴァンリスはトロント出身の女優で、YouTubeのドラマシリーズ『カーミラ』や映画『Almost Adults』でのレズビアン役で有名です。ナターシャ自身もストレートではなく、女性との交際を公言していて、インタビューでは「自分では自分のセクシュアリティにラベルを貼る必要はないと思っているけれど、パンセクシュアルなりクィアなり好きなように呼んでくれてかまわない」(大意)と説明しています。

2017年3月12日、トロントで開催されたカナディアン・スクリーン賞授賞式で、彼女はファンズ・チョイス賞を受賞。以下のスピーチを披露しました。

一部をざっと訳すと、こんな感じです。

ほとんどの人が、「これは一体誰だ?」と思っていることでしょう。ええ、きっと。何年か前、『カーミラ』という小さなYouTubeシリーズの、陰気なレズビアンのヴァンパイア役の契約をしたときには、ここに立つことになると想像すらしていませんでした。投票してくれたすべてのファンに感謝します。

テレビや映画で、クィアなコミュニティの、つまりわたしのコミュニティの肯定的な描写を増やしていくというのは、ずっと光栄で、名誉なことでした。

Most of you are wondering who the heck I am, I'm sure, yeah. A few years ago when booked the role of a broody lesbian vampire on a little YouTube series called Carmilla, I would have never imagined standing here. So thank you so much to all of our fans who voted for me.

It has been an honor and a privilege to provide more positive on-screen representation for the queer community, for MY community.

でも、この受賞はわたしのためのものではありません。これは、どこにも居場所がないと感じていたり、自分はのけ者なんだと思っていたりする、すべてのわたしのファンのためのものだと思います。わたし自身、ロッカーに押し込められていたちっちゃな女の子だったころのことを今でもとてもよく覚えているんですよ。だからこのトロフィーは、あなたたちみんなのためのものなんです。

But this isn't for me, I think this is for all of my fans who feel like they don't belong or who feel like an outsider. I am very much still the little girl who used to get shoved into lockers. So this one's for all of you.

あたし、「今どきレズビアンの吸血鬼でもないだろう」と思って『カーミラ』は未チェックだったのですが、これは見るべきか……!

なお『カーミラ』と『ALMOST ADULTS』のトレイラーはこちらです。

中国の小学生向け性教育テキストがイラストで同性愛など説明 賛否両論

LGBTニュース 百合/レズビアン ゲイ バイセクシュアル

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中国で出版された、小学生向けの性教育の教科書が進歩的だと話題になっています。ジェンダーの平等や、異性愛以外の性的指向、妊娠、性感染症、性虐待などについてイラストを使ってわかりやすく解説していくというシリーズで、反応は賛否両論ある模様。

詳細は以下。

China introduces surprisingly progressive sex education curriculum for kids, some parents freak out: Shanghaiist

この一連の教科書は北京師範大学出版集団が出したもので、対象年齢は6~13歳。表紙や中身はこんな感じです。

Shanghaiistにはもっとたくさんのページが紹介されていますので、よろしければそちらもぜひ。

この教科書では2年生でジェンダーの平等について学ぶことになっているのだそうで、女性も男性もジェンダー・ステレオタイプにあてはまらない職業に就いていいのだということがかわいらしい絵を使って説明されています。他には、陰茎や子宮などのイラストを通じて妊娠のしくみを学ぶページや、「おじさんが新しい服を着せてあげるから服を脱いでと言ってきた」のような具体的な状況を想定した上で、性被害から身を守る方法について勉強するページもあるとのこと。

4年生の学習範囲には、人間には異性に惹かれる人もいれば同性に惹かれる人もいて、どちらもまったく問題ないのだとする記述が含められています。5年生では性感染症やコンドームについての説明があり、異性愛者も両性愛者も性交時にコンドームを使うことが大切だと強調されています。6年生になると両性愛の概念が登場し、教室で子供たちが「バイセクシュアルとしてカムアウトしたセレブの話、聞いた?」などと会話する場面も。さらに結婚に関するページでは、結婚しないという選択も尊重されるべきであること、また結婚は異性同士のものだけではなく、同性カップルにも生殖の権利があることなどが、すべてカラフルなイラストを使って説明されています。

なにこの画期的な教科書。

一方その頃日本では、学習指導要領の改定に向けて「思春期になると、だれでも異性に関心を持つ」という教科書の記述をやめてほしいと求めるキャンペーンが繰り広げられたにもかかわらず、新たに発表された改定案には性的少数者が教室にいることを想定した記述はまったくなかったということがありましてね。文科省に寄せられたパブリックコメントの実に約12%(368件)が多様な性について言及していたのに、スポーツ庁の担当者の見解は「LGBTについて小中学校でうかつに教えると、(当事者の生徒が)いじめにあう恐れがある」というものだったらしいですよ。詳しくは以下を。

嘆かわしいぞ、日本!!

とはいえ中国でもすべての人がこの新しいカリキュラムに賛成しているわけではないらしく、CNNによれば、中国のSNS、微博(ウェイボー)ではこの教科書をポルノ漫画になぞらえたり、子供がイラストで描かれていることを真似するとして非難したりする向きもあるのだそうです。Shanghaiistでは、この性教育テキストには「見るだけで顔が赤くなる」、「男女のセックスの絵は絶対に不適切」などの批判もある一方、医師による「中絶の広告がそこら中で見られる今、大人がこの教科書をやりすぎだと言うのは、彼ら自身の受けた性教育が大きな間違いだったということだ」とする書き込みが大きな注目を集めてもいると報じられています。なお、これまでの中国での性教育がどうだったかというと、2014年に同国の大学生たちが大学でのよりよい性教育を求めてデモを実施したときの、こちらの意見がわかりやすいかも。

「わたし自身の受けた性教育は、実質ゼロでした」と、ダダと名乗るデモ参加者はiCrossChinaに語った。

“My own sex education was practically nothing,” one protestor at the scene, identified as Dada, told iCrossChina.

西安外事学院からの唯一の男性参加者は以下のように言ったと伝えられている。「中国ではほとんどの男性がAVから性知識を得ていますが、AVには性的関係についての誤解につながるような、チェックを受けていない情報が含まれています」「ジェンダーの間の溝に橋を架けることで、誤解をなくすことができます」

“In China, most men pick up sex knowledge from adult videos, but these contain unfiltered information leading to misunderstandings about relationships,” Lu Peiwen, the only male demonstrator from Xi’an International University, was quoted as saying. “Bridging the gap between genders can remove those misunderstandings.”

性教育が不足していてAVが情報源になっているという状況は、なんだか日本にも相通じるものがありますが、この分だと今後そこからの巻き返しに大きく差がついていくかもしれませんね。なお、中国国内の複数のLGBT団体は、もちろんこの新しい教科書に拍手を贈っているとのことです。目下のところこのカリキュラムは少数の学校でしか採用されていないのだそうですが、今後もっと多くの子供たちがこの教科書で勉強できるようになることを願ってやみません。

米プロレスラー、アンソニー・ボウエンズが両性愛者としてカミングアウト

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米国のプロレスラー、アンソニー・ボウエンズ(Anthony Bowens)選手がボーイフレンドと撮ったキュートな動画を通じて両性愛者としてカミングアウトし、心境を語りました。

詳細は以下。

Goofy video with boyfriend spurs bisexual pro wrestler to come out - Outsports

ボウエンズ選手はニュージャージー生まれで現在26歳、フィットネスモデルや俳優としても活躍しています。彼のカミングアウトの契機となったのは、恋人でフィットネストレーナーのマイケル・パヴァーノ(Michael Pavano)氏と一緒に撮影して、2016年9月にYouTubeで発表したギャグ動画でした。この動画の中で、ボウエン選手はパヴァーノ氏から「ぼくのボーイフレンド」と紹介されているんです。

Outsportsによるとボウエンズ選手は5年前にプロレスラーとしてデビューして以来、両性愛を公表したら問題視されるのではと考えて、数人にしかカミングアウトしていなかったのだそうです。上記の動画をアップロードするのも不安だったとのことですが、動画を見たプロレス界の親友は彼の性的指向をまったく問題視せず、それ以外の友人や両親からも、これまでと変わらない愛と支援が寄せられたとのこと。それで2017年1月8日、Facebookで改めてこんなメッセージを発表したのだそうです。

長ったらしい文章を書くつもりはありませんが、今がその時だと思います。ぼくがバイセクシュアルだということを、みんなに知ってほしいのです。ぼくの旅を続けることで、人々の認識を変え、ステレオタイプを打ち破ることを楽しみにしています。否定的な考えには我慢ならないので、これが嫌だと思う人は、どうぞぼくをデリートしてください。読んでくれてありがとう!

I'm not going to make this a long winded post but I think it's time. Just wanted to let everyone know im Bisexual. I look forward to changing perceptions and breaking stereotypes as I continue on my journey. I have zero patience for negativity so if this bothers you please delete me. Thanks!

で、そこからはもう、こんなスーパーキュートなカップル写真をInstagramに載せまくり。

I'd like to introduce you to my better half @michaelpavano. Give him a #follow, he's kinda cool haha

Anthony Bowensさん(@bowens_official)がシェアした投稿 -

#awkwardprompics @michaelpavano

Anthony Bowensさん(@bowens_official)がシェアした投稿 -

いいねえ。

ボウエンズ選手によれば、彼がカミングアウトに踏み切ったのは、(1)自分の権利のため、(2)最愛の人に嘘をつかせたくないから、(3)自分の立場を生かして世のステレオタイプを打破し、人は性的指向が何であれ本来の自分でいていいのだと示したいから、という3つの理由によるものだったとのこと。Outsportsで発表した手記を、彼はこんな風にしめくくっています。

ぼくの旅路でたとえひとりでも誰かを力づけることができて、その人が自分自身の戦いをやりとげたり、夢をかなえたりしてくれたら、それだけでカミングアウトした甲斐があります。旅も戦いも、たった今始まったばかりです!

If I can help inspire at least one person to fight past their struggles through my journey or inspire at least one person to live their dreams, it’s all worth it for me. The journey and the fight is just beginning!

LGBT、LGBTと頭文字だけつなげて連呼されるようになっても、その中の「B」は常に不可視化されがちです。事実、米国のLGBT人口の中ではバイセクシュアルの自認をもつ人がもっとも多いはずなのに、LGBTコミュニティからのサポートがもっとも少ないのもバイセクシュアルであるとか、LGBTQキッズの中ではバイセクシュアルの子供がもっとも自殺リスクが高いなどとする調査結果も複数報告されています。こうした不均衡の陰にあるのはバイフォビア(両性愛嫌悪)とモノセクシズム(単性愛主義、あるひとつの性に属するメンバーのみに惹かれる性的指向こそが好ましいとする信念)で、ボウエンズ選手のいう「ステレオタイプ」の根底をなしているのもおそらくこれらであるはず。彼のようなオープンリー・バイセクシュアルの活躍を目にする機会が増えることで、バイセクシュアルに対するネガティブな誤解が粉砕されていくよう、いちレズビアンとして心から願っています。

米国人の過半数がトランス差別的な「トイレ法」に反対

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米国で2017年2月に成人約2000人を対象に実施された電話調査で、回答者の半数以上が、トランスジェンダーの人々の権利を制限する「トイレ法」に反対していると答えたそうです。

詳細は以下。

Americans Oppose Bathroom Laws Limiting Transgender Rights: Poll - NBC News

「トイレ法」とは、トランスジェンダーの人々に、自認するジェンダーではなく「生物学的性」または出生時に割り振られた性別通りのトイレやロッカールームを使うよう強制する法律のこと。代表的なのはノースカロライナ州の「HB2」です。詳しくは以下をどうぞ。

オバマ政権では、連邦政府から補助金を受けているすべての学校に、トランスジェンダーの児童・生徒が認識している通りのジェンダーに合ったトイレを使えるようにしなければならないとする通達が出されていました。しかし、トランプ政権はこれを撤回すると発表しています。全米州議会議員連盟(National Conference of State Legislatures)によれば、この発表をきっかけに、新たに12もの州が「トイレ法」の導入を検討し始めているとのことです。

そんな中、Public Religion Research Instituteが実施したこの調査では、計2031人の回答者のうち53%がこのようなトイレ法には反対だと述べたとのこと。賛成は39%、「意見なし」は8%だったそうです。より詳しい結果については、以下のリンク先をご覧ください。

上記リンク先の「トイレ法」についての項目で興味深いのは、支持政党ごとの差異。民主党員ではこの法律に反対する人が65%、賛成する人が30%。支持政党なしの人では反対が57%、賛成が39%で、民主党員とそう大きくは変わらない比率でした。ところが共和党員ではこの割合が逆転し、反対36%に対し賛成が59%を占めるんです。

党ごとの違いで他に目立っていたのが、「以下の集団に対して、たくさんの差別があると思いますか」という問いに対する回答差。民主党員では「黒人」「同性愛者」「トランスジェンダーの人々」「移民」「イスラム教徒」などの項目で、多くの差別があると答えた人がそれぞれ約8割いたのに対し、共和党だとどれもほぼ約3~5割程度に過ぎないんです。なんと共和党員の間では、黒人は多くの差別を受けていると答えた人(27%)よりも、白人やクリスチャンが多く差別されていると答えた人の割合の方が多かった(前者は43%、後者は48%)んでした。うへー。まるで、ジェンダーギャップ指数が世界111/144位で、世界一男が家事をせずフルタイム労働者の男女賃金格差が約30%もあり、労働市場での男女平等度を示す「ガラスの天井指数」でも先進国29か国中28位男女の大学進学率に1.4倍の差があり全国会議員に占める女性議員の割合は世界193か国中163位、そして3日に1人妻が夫に殺されているこの日本で「日本では女性が優遇され、男性が差別されている」と信じて疑わない一部の日本人男性みたいね……。

前から思ってたんだけど、トランプ当選とともに「これまで抑圧されていた、隠れた『多数派』」によるバックラッシュが始まったという見方はあんまり正確じゃないんじゃないでしょうか。白人クリスチャンこそが差別されているのだと信じている共和党支持者が、(popular voteでは勝てなかったものの)トランプを大統領にできたことで大いに調子づいているってことも、かなりあるのでは。ほら、いくら「トイレ法」の提出が相次いでいるとはいっても、少なくともこの調査では反対派の方が賛成派より多かったわけですし。それにこの調査結果によれば、最近「トイレ法」と同じぐらい議論の対象となっている「宗教の自由法」(小規模企業のオーナーは宗教的信条を根拠に同性愛者に対するサービスの提供を拒否していいとする法律)に反対だと答えた人もやはり過半数(64%)を占めていたそうです。そして、LGBTの人々を保護するための反差別法に賛成した人も、全体の70%もいたとのこと。ホワイトハウスや州議会で差別的な政策やら法案やらが発表されるのを見るたび凹んでしまうことは否めませんが、米国全体に失望するのはまだ早いんじゃないかと、改めてちょっと思ったりしました。

実写版『美女と野獣』(2017)、ゲイ要素のためマレーシアで上映延期 ロシアで年齢制限(追記あり)

LGBTニュース 映画 ゲイ

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脇役のひとりを公式設定でゲイとしたディズニーの実写映画『美女と野獣』が、マレーシアでゲイなシーンをカットされ、さらに上映延期となりました。一方ロシアはこの映画を16禁指定に。米国アラバマ州でも上映中止する映画館が出ています。

詳細は以下。

'Beauty and the Beast' Postponed in Malaysia, Even After 'Gay Moment' Cut - NBC News

この映画で新たにゲイとしての側面を描かれるのは悪役ガストンの子分、ルフウ(ジョシュ・ギャッド)。ビル・コンドン監督は本作のルフウを「ガストンにキスしたいと思う日もある」キャラだと説明しています。またPinkNewsによれば、この映画の終盤にはルフウと男性とのダンスシーンが出てくるとのこと。

NBC Newsによれば、マレーシアの首都クアラルンプールでは当初公開日を2017年3月16日とした『美女と野獣』のポスターがそこら中に貼られていたのに、その後大手映画館チェーンTGV CinemasのWebサイトに、以下のような告知が掲載されたのそうです。

「不測の事態により、『美女と野獣』の公開は延期されました。今後のお知らせをお待ちください」

"Due to unforeseen circumstances, the release of 'Beauty and the Beast' has been postponed until further notice,"

同国検閲委員会のAbdul Halim Abdul Hamid議長はロイターに対し、『美女と野獣』は「ゲイな瞬間」をカットした上でレーティングをP13(13歳未満の鑑賞には成人保護者の助言が望ましいとする区分)としたと説明し、「公開が延期になったとは知らなかった。早く上映が始まるよう願っている」と話したそうです。だから完全に上映が阻止されたというわけではなさそうなのですが、やっぱりカットはされるんですね。イスラム教が国教のマレーシアでは、これまでにも豚が主人公だという理由で『ベイブ』の上映がブロックされたりしているそうですから、無理もないことなのかもしれませんが。

これでマレーシアは、本作品を16歳未満鑑賞不可としたロシアに続き、世界で2番目に実写『美女と野獣』に検閲を入れた国になりました。本国アメリカのアラバマ州でも、あるドライブインシアターのオーナーが「自分たちは何よりもまずクリスチャンである」から「企業からの圧力に立ち向かわねばならない」として上映中止を発表し、話題になっています。またマレーシアのお隣のシンガポールでは、セント・アンドリュース大聖堂のWebサイトに、このリメイクの「ホモセクシュアルな内容」を問題視し、箴言22:6(『若者を歩むべき道の初めに教育せよ。年老いてもそこからそれることがないであろう』)をひいて親への注意を呼び掛ける声明文が掲載されたりもしています。まったく、ご苦労様なことで。

ところで疑問なんだけど、皆さんたかがサブプロットのゲイ要素にここまで大騒ぎするわりに、「少女が毛むくじゃらの野獣と恋をする」というメインプロットには何も言わないのはどういうわけ? イスラム教でもキリスト教でも獣との交わりは罪とされているはずなのに、偽善もいいとこだわ。

なお、城の執事コグスワース役で本作品に出演しているオープンリー・ゲイの俳優、イアン・マッケランは、ニューヨークでのプレミアで、ルフウのゲイネスにまつわる騒ぎを「ばかげている」と評したとのこと。以下、CNNの記事より彼の発言を引用します。

「おとぎ話にゲイの登場人物が出てくるという考えが気に入らない人々は、もし自分自身がゲイだったら、どうして排除されなければならないのかと考えてみるべきだ」

"People who don't like the idea of gay characters appearing in fairy stories should think what they would think if they were gay themselves and why should they be excluded?"

そしてサー・マッケランは、問題のシーンは「急進的な("revolutionary")」ものではないと述べた上で、こんな風に付け加えたのだそうです。

「それについて文句を言い、子供には見せたくないと言うのは、まったくばかげている」とマッケランは語った。「同性愛者を嫌っていて不平を鳴らす人々のことは知っている。あれは映画の中のとても小さな瞬間で、そこまで興奮するようなものではないよ」

"For people to complain about it and say they don't want children to see it is absolute rubbish," McKellen said. "I know people who don't like gay people and make a fuss. It's a very small moment in the movie, no one should get too excited."

案外ふたを開けてみたら『ファインディング・ドリー』のあの「レズビアンカップル」(ではないかと噂されたカップル)(あたしは映画館で2回観ましたが、特にそのキャラがレズビアンっぽいとは思いませんでした)の場面と同程度の全然目立たないシーンだったりしてね。考えてみれば、ハリウッドではほんの半世紀ほど前まで異性同士のセックスはおろか夫婦がひとつのベッドで寝る場面さえ描けなかったのですから、子供向け映画ではまだ歴史が浅いゲイネスの描写が「とても小さな瞬間」程度になるのは当然といえば当然かも。それでもとにかくこうやって議論が交わされることで、「世界は同性愛を含む」というあたりまえの真実がもっと知られるようになるといいなと思います。世界にはヘテロしかいないだなんていう大嘘を、これ以上子供に見せ続けたくはないよあたしは。

追記(2017年3月15日)

BBCから続報が出てました。ディズニーは2017年3月15日、マレーシアでゲイなシーンのカットはせず、公開を延期すると発表したそうです。今となってはマレーシアでの公開自体が実現するかどうか定かではないとBBCは書いています。詳しくは以下を。

レズビアンの結婚式で両親が出席拒否。上司がウエディングアイルを歩く役目を買って出る

LGBTニュース 百合/レズビアン

Lesbian Bridal Cake Topper 5 High by Naturalstar

2016年11月、台湾でジェニファーさんとサムさんという女性同士のカップルが結婚式を挙げました。両親から式への出席を拒否されたジェニファーさんのため、彼女の上司が父親代わりとしてウエディングアイルを歩き、大いに話題になっています。

詳細は以下。

This Lesbian's Boss Walked Her Down The Aisle After Her Dad Refused To | The Huffington Post

動画はこちら。(英語字幕あり)

ジェニファーさんとサムさんは付き合って11年になるカップル。台湾ではまだ同性婚は法制化されておらず、この結婚式は「人々を力づけ、異なるコミュニティ間のリスペクトを作り出す」ことを目的とした象徴的なものだとのことです。

ジェニファーさんの勤務先は台湾HSBC銀行で、カミングアウトする前は「人にからかわれるのでは」「顧客が離れていくのでは」という不安もあったそうです。ところが実際にはとてもサポーティブなお客さんもいた上に、上司や同僚も応援してくれたとのこと。残る問題は、ジェニファーさんの同性愛を快く思っていないご両親。特にお父さんの方がサムさんに対してひどく敵対的で、ジェニファーさんはお父さんのために男性との偽装結婚まで考えたこともあったとのこと。結局ご両親はジェニファーさんとの連絡を絶ち切ってしまっていて、サムさんとの結婚式への出席も拒否したのだそうです。

そんなジェニファーさんの手を取ってウエディングアイルを歩く役を買って出た人がいました。台湾HSBC銀行のCEO、John Li氏です。当日、式場に入場する場面で、ふたりは「ここまでやれるとは思っていなかった」と泣いてしまったとのこと。

HSBCは英国ではLGBT団体ストーンウォールの選ぶトップ100雇用者にランクインしており、欧州でも2015年の欧州多様性賞(European Diversity Awards)で年間最優秀多様性チーム賞(Diversity Team of the Year)を受賞しているメガバンク。香港でも昨年「プライドを祝え、団結を祝え」(『慶祝驕傲、慶祝團結』、"Celebrate Pride, Celebrate Unity")キャンペーンの一環として香港本部前のライオン像をレインボーカラーにして、大いに話題を呼びました。そりゃあ台湾でもCEOみずからウエディングアイル歩くよね。ちなみに上記の動画も、HSBC台湾が今年のバレンタインデーにアップロードしたものだとのことです。

こうした動きを企業イメージのためのプロパガンダや、単なる人材確保のための多様性支持だとして斜に構えて見る向きもあるのでしょうが、だとしても性的マイノリティであることを理由に職場でハラスメントを受けたり退職強要されたりするような企業風土(日本の例海外の例)より一億倍いいですよ。個人的には結婚式での「父親が花婿に娘を渡す」という形式の儀式は「ザ・家父長制」めいていてあまり好きになれないのですが、最近ではここでの文言をもっと平等なものにするやりかたもいろいろ提案されているようですし、何より結婚する本人たちが喜んでいるのならそれが一番だと思います。ジェニファーさんもサムさんもおめでとうございます、お幸せに。