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石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

今週の未紹介LGBTニュース(2017年5月28日)

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ユナイテッド航空から児童性虐待者扱いされたゲイ・ファーザーが訴訟へ

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ユナイテッド航空のフライトで5歳の息子の膝に手を置いていたゲイ男性が、同社の搭乗員から「手の場所が子供の性器に近すぎる」ため「危険で有害」であるとして通報され、1時間拘禁されたとして、同社を訴える意向を示しています。

詳細は以下。

Gay dad to sue United Airlines after it said his hand was ‘too close’ to his son’s genitals · PinkNews

事件が起こったのは2017年5月17日のこと。この男性ヘンリー・アマダー=バッテン(Henry Amador-Batten)さん(52)は、夫のジョエル(Joel)さんと5歳の息子のベン(Ben)君と一緒に、ユナイテッド航空の便でプエルトリコから帰国するところでした。フライト中、ヘンリーさんは飛行機を怖がるベン君を安心させようと、眠っているベン君の膝の上に自分の手を置いていたとのこと。ところが、ローリー・ダーラム国際空港に着陸するや、ヘンリーさんは警官の群れに直面するはめに。ヘンリーさんの手が子供の性器に近すぎると考えたユナイテッド航空の搭乗員が、当局に通報していたからです。

ヘンリーさんは結局1時間拘束されたのち、罪に問われることなく解放されました。しかしながらこのカップルは、他の乗客の面前であたかも犯罪者のような扱いをされた上、搭乗員も機長も「まったくもって卑劣で、絶対に許せない」態度だったとして、同社を訴えると表明しています。以下、それぞれジョエルさんとヘンリーさんのことば。

「ただ単に自分たちの見かけがだれかの気にいらないかもしれないからという理由で、フライト中にこんな目に遭わされることを心配しなければならないだなんて、どんな人にもあってはならないことです」

“This is not something that anyone should have to worry about happening to them on a flight just because someone might not like the looks of them.

「このユナイテッド航空の搭乗員は子供を救ったのではなく、ひとつの家族を傷つけたのです」

“This United Flight crew did not save a child, they hurt a family.”

ユナイテッド航空は2017年4月9日、社員の座席を確保するためベトナム系米国人の乗客を強制的に引きずり下ろし、鼻と前歯2本を折るなどの重傷を負わせて問題になったばかり。日本ではあまり報道されなかったようですが、その後、脊椎の病気を持つゲイ男性に対し、移動支援機器の積み込みを拒否(機内持ち込みも預かりも拒否)して彼のハネムーンを台無しにしたりもしています。今回の件について、同社のスポークスパーソンはふたりに直接謝罪済みであると発表しているそうですが、ヘンリーさんによれば謝罪のためにこのカップルのもとを訪れた女性は「ユナイテッド航空は最近『ひどい報道』を経験しているからこの件は公表しないでほしい」と頼んできたとのこと。それは謝罪ではなくただのもみ消しだし、そもそも最近なぜ批判されているのかもわかっていないのでは?

思うのですが、もしヘンリーさんが夫ではなく妻と一緒に飛行機に乗っていて、子供の膝に手を置いていたとしたら、こんな通報はされなかったのでは。「ゲイは同性になら誰にでも欲情するセックスモンスター」とか、「ゲイは子供をつけねらっている」とかいう古典的な偏見(偏見ですよ。少なくとも、既にこれまでの研究・調査の結果から、『男の子を性虐待する成人男性の大部分が異性愛者のアイデンティティを持っている』、『小児性愛者は相手のジェンダーではなく極端な若さに興奮する』、『ゲイによる男児への性虐待は稀で、レズビアンによる女児への性虐待はさらに少ない』などと指摘されているのは確か)が、今回のようなトラブルを生んだ可能性は高いと思います。上記の「謝罪」から言って、今後社として積極的に再発防止に取り組むとは考え難いし、ユナイテッド航空の飛行機には乗らないようにするのが賢明かもね。

女子スカッシュ元世界1位&2位が交際を公表 同性愛者としてカミングアウト 

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女子スカッシュの元世界王者レイチェル・グリナム(Rachael Grinham)選手と、元世界第2位のジェニー・ダンカーフ(Jenny Duncalf)が「US Squash Magazine」誌の記事で同性愛者として公式にカミングアウトし、交際を発表しました。

詳細は以下。

World squash champions come out as gay and reveal they are a couple · PinkNews

グリナム選手はオーストラリアの、ダンカーフ選手は英国のスカッシュプレイヤー。二人合わせて6つの金メダルと44ものツアータイトルを持っているという名選手コンビで、2015年から豪州ブリスベンで同居中なんだそうです。

単に同じ競技内での同性カップルというだけなら、昨今はそう珍しくもない気もします。女子ホッケーにはケイト&ヘレン・リチャードソン=ウォルシュ選手がいるし、女子サッカーにはエリン・マクロード選手とエラ・マザー選手がいるし、UFCにもアマンダ・ヌネス選手とニーナ・アンサロフ選手がいますもんね。でも、プロスカッシュの現役選手となると、そもそもこのふたりが初のオープンリー・ゲイのプレイヤーなのだそうです。今回のカミングアウトについてふたりは、プロスポーツ界でのカミングアウトで励まされる人がたとえひとりでもいるのならそうする価値があると思った、今では先人の苦闘のおかげで昔より偏見は減っているし、このニュースへの反応はネガティブなものよりポジティブなものが多いはずだと思う、などと話しているとのこと。

上記の「カミングアウトで励まされる」ということに関して、最近見終わったばかりのNetflixドラマ『センス8』シーズン2のことをちょっと思い出しました。このシーズンでは、ゲイだということを公に認めたメキシコ人の俳優が、マチスモあふれるメキシコ社会でさまざまな嫌がらせを受ける反面、おそらくはクロゼットな(または、元クロゼットだった)ゲイの人々から泣かんばかりの勢いで「ありがとう」と言われるという描写が何度か出てくるんですよ。あの「ありがとう」の意味が、あたしには骨身にしみてよくわかります。あれこそが「励まされる」ってことなんだよ。ある種の異性愛者にとっては同性愛者のカミングアウトは「私的なことをわざわざ口に出す不可解な行為」なのかもしれないけれど、ホモフォビックな環境の中で孤立している同性愛者にとっては、あれは援軍の狼煙であり、騎兵隊のラッパなんだよ。

ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』の主要女性キャラ同士がキス シーズン7トレイラーで

Game of Thrones ゲーム オブ スローンズ ポスター ロゴ 202

エミー賞12冠受賞の米ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のシーズン7(日本でのサブタイトルは『第七章:氷と炎の歌』)のトレイラーに、女性の主要キャラ同士のキスシーンが登場しています。

詳細は以下。

Two major female characters are getting intimate in Game of Thrones trailer · PinkNews

トレイラーはこちら。キスシーンはほんの一瞬なので、よく見てくださいね。

誰と誰とのキスなのかについては、ネタバレが嫌な人のためにここでは伏せておくことにします。PinkNewsには両者の名前とどんなキャラなのかについての説明があるので、気になる方はそちらをどうぞ。なおスターチャンネルのゲーム・オブ・スローンズ公式サイトによれば、シーズン7は2017年7月17日(日本時間)、日米同時に放映開始されるとのこと。

メアリー・ランバートMVのサラ・ラミレスの髪型がかっこよすぎて惚れる

Know Your Name

メアリー・ランバート(Mary Lambert)の新曲"Know Your Name"のMVに、サラ・ラミレス(Sara Ramirez)がゲスト出演しています。『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』のあの人みたいなヘアスタイルがかっこよすぎて惚れそう。

詳細は以下。

Mary Lambert Know Your Name Music Video Bold Album 2017

動画はこちら。

サラ・ラミレスの登場は0:47あたりから。「ソリティアのサラ(Sara "Solitaire")」という二つ名や、いわゆる「スーパーヒーローの着地」(『デッドプール』でギャグにされてたアレ)をきっちり決めてくるところだけでも楽しいのに、MV後半で披露される超ダイキーなヘアスタイルのホットなことと言ったら! メアリー・ランバートとのケミストリーもよく、これはキャスティングの勝利だと思いました。

MVの舞台がちょっとレトロなゲーセン(最初に出てくる筐体がスト2ターボのものだったりします)だというのも面白いんですが、Refinery29によるとこれは、

  • 通常バーやレストランに設定されがちな「誰かの名前を知る」というシチュエーションを世界滅亡後のバーケイド("barcade"、お酒が飲めるアーケードゲーム店)にもってきて、
  • さらに「語り手の片思いの相手が本当にアーケードゲームが好きな人だったら」という設定にして、
  • ちょっとナード入ってるメアリー・ランバートの意向でライトセーバーやら何やらの要素を詰め込んだ

結果としてこうなったのだそうです。いいねえ、この店でキックアスな(そしてナーディーな)お姉さんたちに囲まれながら、1日中波動昇竜拳の練習でもしていたいよあたしゃ。二つ名は何にしようかしら。

Know Your Name

Know Your Name

台湾の最高司法機関が同性婚を支持 アジア初の同性婚法制化へ

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台湾の司法最高機関、司法院大法官会議が2017年5月24日、同性婚を認めない現行の民法は憲法に反するという判断を下しました。政府は2年以内の立法を求められ、もし立法されなくても、今回の判断に基づき同性カップルは結婚届を受理されるとのこと。

詳細は以下。

詳しくは上記リンク先を読んでいただくとして、興味深いのはBuzzfeedで紹介されている、台湾で同性婚を認めるべき根拠として挙げられたという論点の数々ですね。以下、ちょっと引用します。

  • 同性間で婚姻を認めたとしても、それが異性間での婚姻に影響することはない。社会秩序への悪影響もない。
  • 生殖と結婚とは関係がない。現行民法では、生殖能力がない人も結婚できる。結婚後に生殖できなくなったら離婚というわけでもない。
  • 「結婚するかどうか」や、「誰と結婚するか」を選ぶ権利は、誰もが持っているものだ。こうした自己決定権は、人格を健全に発展させ、人の尊厳を守るもので、憲法22条で保障された基本的人権の一つだ。
  • 同性間で結婚できないのは、不合理な差別である。

BuzzFeedによると明治大学の鈴木賢教授はこれらについて「2015年に出たアメリカの最高裁判例の影響が及んでいるとみるべきかもしれません」と述べているとのこと。確かに、米最高裁が同性婚を認めたときの判決文には上記の論点と通底するものが多いと思います。以下、米最高裁の判断から、該当しそうな箇所をいくつか選んで訳してみます。

被告はまた同性カップルの結婚を許せば異性同士の結婚が減り、結婚制度に害を与えると主張している。このようなことが起こりうるのは、同性婚の許可は自然な生殖と結婚とのつながりを断ち切ってしまうからであると被告は強く主張している。しかしながらこの意見は、異性同士のカップルが結婚したり親となったりするときの意思決定の過程に関する、反直観的な見解に基づいている。結婚して子供を育てるかどうかについての決定は、たくさんの個人的な、ロマンティックな、そして実際的な熟慮に基づいているのであり、異性カップルが単に「同性カップルが結婚を許可されているから」というだけの理由で結婚しないことを選ぶと結論づけるのは非現実的である。

The respondents also argue allowing same-sex couples to wed will harm marriage as an institution by leading to fewer opposite-sex marriages. This may occur, the respondents contend, because licensing same-sex marriage severs the connection between natural procreation and marriage. That argument, however, rests on a counterintuitive view of opposite-sex couple’s decisionmaking processes regarding marriage and parenthood. Decisions about whether to marry and raise children are based on many personal, romantic, and practical considerations; and it is unrealistic to conclude that an opposite-sex couple would choose not to marry simply because same-sex couples may do so.

同性カップルの結婚の権利はまた、合衆国憲法修正第14条による、平等な保護の保証からも導かれる。

The right of same-sex couples to marry is also derived from the Fourteenth Amendment’s guarantee of equal protection.

異議を申し立てられているこの法律(訳注:結婚は男女の間だけのものと定めた法律のこと)は、同性カップルの自由に重荷を課し、平等というものの中心的な指針を縮小してしまっている。問題となっている婚姻法は、本質的に不平等だ。同性カップルは異性カップルが提供されている利益を与えられず、基本的人権の行使を妨げられているのだから。

The challenged laws burden the liberty of same-sex couples, and they abridge central precepts of equality.The marriage laws at issue are in essence unequal: Same-sex couples are denied benefits afforded opposite-sex couples and are barred from exercising a fundamental right.

ラヴィングは「異人種同士が結婚する権利」を問うたのではなかった。ターナーは「囚人が結婚する権利」を問うたのではなかった。ザブロキは「監護権のない子供を持つ父親が結婚する権利」を問うたのではなかった。これらのどの訴訟においても、該当する人々を結婚の権利から排除するのに足る理由があるかどうかを問うことによって、総合的な意味での結婚の権利が問われたのである。

Loving did not ask about a “right to interracial marriage”; Turner did not ask about a “right of inmates to marry”; and Zablocki did not ask about a “right of fathers with unpaid child support duties to marry.”Rather, each case inquired about the right to marry in its comprehensive sense, asking if there was a sufficient justification for excluding the relevant class from the right.

ただ、ここでちょっと補足しておくと、この2015年の米最高裁判決がきわだって画期的だったとか明快だったとかいうわけではなくて、それ以前のケンタッキーや、ウィスコンシンとインディアナや、オクラホマの同性婚訴訟でも、連邦控訴裁はほぼこれと同様の判断を示してきているんですよね。さらに、今回の台湾の、同性婚が「社会秩序への悪影響もない」という主張には、2013年にフランスの憲法会議が示した、「(同性婚は)人権や自由や国家主権を侵害しない」という判断を連想させるものがあるようにも思いました。また、同性カップルの結婚の権利を基本的人権ととらえるのも別に米国の専売特許ではなく、実際カナダは米国より10年も前(2005年)に、カナダ人権憲章を根拠としてCivil Marriage Actを成立させています。そのようなわけで、今回の台湾の司法判断は、「アメリカの最高裁判例の」影響というより、世界中でこれまで繰り拡げられてきた、同性婚にまつわる議論を総合的に俯瞰した上でのものだったのではないかとあたしは感じました。よってあたしには、「すさまじい」判断というより、「よく勉強しておられるわ、台湾の大法官の皆さん……!」としか思えません。前々から思ってましたが、この日本から見ていると、台湾の後ろ姿がまったくもってまぶしいです。

同性間の片思いを描くCGアニメ『In a Heartbeat』、クラウドファンディングで製作へ

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男の子から男の子への片思いを描く3DCG短編アニメ『In a Heartbeat』がKickstarterで資金3千ドルを募ったところ、1万4千ドルものお金が集まったそうです。公開は2017年夏予定、トレイラーが超キュート!

詳細は以下。

WATCH: This animation about an awkward school boy's same-sex crush is too cute for words

まずはトレイラーをごらんください。

オフィシャルポスターはこちら。

『In a Heartbeat』は、クロゼットな主人公シャーウィン(Sherwin)が、学校一の人気者ジョナサン(Jonathan)に恋をし、文字通り自分のハートに振り回されるという物語。KickstarterのFAQページによれば、本作品は3分30秒から4分30秒の長さになる予定で、完成したらオンラインで無料公開されるとのこと。

このショートフィルムの製作に取り組んでいるのは、米フロリダ州にあるリングリング・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインの最上級生、エステバン・ブラボ(Esteban Bravo)さんとベス・デイヴィッド(Beth David)さんのコンビ。ふたりはkickstarterで、この作品はこれまでの勉強の集大成であるとともに、「コンピュータアニメの世界では掘り下げられてこなかった主題の表現」でもあると説明しています。Gay Star Newsによれば、ふたりはシャーウィンのようにLGBT+のアイデンティティーと格闘している子供や若者に、愛と自己受容のメッセージを送りたいと考えているのだそうです。

必要ですよね、こういう作品。アイスランドの子供向け番組が言う通り、自分の心臓が何にドキドキするかは自分では決められないのですから、ヘテロ以外の子供が自分を重ね合わせることができるこうしたお話の存在はとても大切だと思います。

それに、ヘテロ家庭で育つヘテロの子供たちにとっても、小さいうちからヘテロ以外の表現を目にするのは大切なこと。ちなみにドラマ『グレイズ・アナトミー』でレズビアンの女医アリゾナ・ロビンスを演じているジェシカ・キャプショーの娘は、「あかちゃんはパパとママのいるおうちにしかうまれないんだよ」と言う保育園のクラスメイトに、辛抱強く「ママとママのときもあるし、パパとママのときもあるし、パパとパパのときもあるんだよ」と説明しているそうですよ。普段から見聞きするものの力って、あなどれませんよ。

ディズニーもピクサーもドリームワークスもまだまだLGBT+テーマには及び腰な今、もう子供向けCGアニメに関してはこうした有志による作品に期待をかけた方が早いのかもしれないと思います。とにかく公開が楽しみです、『In a Heartbeat』。

最後に、おまけ。ブラボさんのInstagramより、『In a Heartbeat』のキャラによる『ブロークバック・マウンテン』パロディーをどうぞ。