石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

ショッピングモールのゲイカップル排除事件続き:差別根絶求めキスで抗議 メキシコ・プエブラ州

プライド・フラッグ

www.elsoldepuebla.com.mx

ショッピングモール警備員が同性カップル差別 動画が拡散され店が謝罪 メキシコ・プエブラ州 - 石壁に百合の花咲くの続報。事件のあったショッピングモール"Paseo San Francisco"に対し、地元のLGBTQ+コミュニティが、差別の根絶を求めるための平和的抗議活動を実施しました。

抗議方法は"besatrón"、つまり英語でいうところの"kiss-in"。要するに、参加者が一か所に集まって一斉にキスすることで抗議の意を示すというものです。地元の性的少数者団体らは、同モールで警備員から脅されたカップルが2023年5月11日に動画を公開した後、ネットで5月14日の"besatrón"開催を告知して参加を呼び掛けていました。当日、参加者らはこのモールの洋服店前で、カウントダウンとともにキスを開始したとのこと。

映像はこちら。

前回お知らせした通り、このショッピングモールは該当の警備員を解雇し、13日に謝罪文も出しています。でも、それで喜んでしまっていた自分は甘かったと、今回のEl Sol de Pueblaの報道を見て反省しました。以下、引用して訳します。

この抗議運動に先立ち、差別を受けたカップルのラムセスとディエゴは、ショッピングセンターのとった措置について意見を表明した。

彼らは、暴力をふるった警備員を解雇しても「状況を修復する」ための解決策にはならないと指摘し、スタッフ全員に反差別と社会的包摂の研修を受けさせるよう求めた。

Previo a la manifestación, Ramsés y Diego, pareja que fue discriminada, se pronunciaron sobre las medidas que tomó el centro comercial respecto a su caso.

Señalaron que el despido del guardia que los violentó no es la solución para ”reparar la situación”, por lo que pidieron que el personal sea capacitado en materia de no discriminación e inclusión social.

確かに、いくら店が警備員をひとり解雇しようと、そして「差別は許さない」と発表しようと、個々のスタッフに「差別とは何か」という認識および差別的でない接客をするスキルがなかったら、この先何度も同じことが繰り返されるだけですもんね。本のタイトルにもなっている通り、「差別はたいてい悪意のない人がする」*1ものなんだから、従業員全体への抜本的な教育とトレーニングがなければ防げないわ。それを見据えた上で再発防止を求める"besatrón"を開いたプエブラの皆さまは偉いし、ショッピングモールの謝罪文がご不快構文じゃなかっただけで喜んでしまった自分は志が低すぎたと思います(日本語空間でヘイトばっかり見かけすぎて弱ってるのかもしれん)。

*1:この本ちょうど今読んでるところで、おすすめです。

ドリトス、ホモフォビック発言のインフルエンサーとの関係打ち切りを発表 コロンビア

ドリトス ナチョチーズ味 160g

escandala.com

コーンチップスのブランド、ドリトスが、コロンビアのインフルエンサーWestColとの関係を終了させ、今後のキャンペーンにも起用しないことを発表しました。原因は、WestColがライブ配信中におこなったホモフォビックな発言。

WestCol(本名Luis Villa)は主にTwitchで活躍する人気ストリーマーまたはコンテンツクリエイターで、これまでドリトス、バドワイザー、レッドブルなどと組んで仕事をしてきた人だとのこと。で、そのWestColが配信中、「もし友達からゲイとしてカミングアウトされたらどうするか」という質問に対しておこなった回答が、それはそれはひどかったんです。

以下、書き起こしをescandala.comより引用してざっくり訳。

「その淋病野郎に銃弾をぶち込むよ、ケツの穴でヤるのがそんなに好きなら、ヤるための穴をあと17個開けてやる……おえっ、そいつを蜂の巣にしてやる、こっちに来るな、俺の人生に関わるな、アホなことがしたけりゃしろ、だが俺の遠くでやれ、なんで俺がそんなクソなことを我慢しなきゃいけねえんだ? ふっざけんな」

“ENCIENDO A ESA GONORREA A BALÍN, SI LE GUSTA TANTO QUE LE DEN POR ESE CULO LE HAGO OTROS 17 HUECOS PARA QUE LE DEN… UY PAPI, LO FULMINO A BALAZOS, QUE NO VENGA POR AQUÍ A JODERME LA PUTA VIDA, QUE HAGAN SUS MARICADAS, PERO LEJOS DE MÍ, ¿POR QUÉ YO TENGO QUE AGUANTARME ESA MIERDA?, NUNCA EN LA VIDA”,

ドリトス・コロンビアはこの配信から数時間後、こうした発言は「ブランドの価値観や原則と一致しない」ため、彼が関与したこれまでのコンテンツは全削除し、今後のキャンペーンでも起用しないとする声明を発表しました。

さすがはドリトス。これまでレインボーカラーのチップスの売り上げでクィアな子供たちの自殺予防運動を支援したり、キスで100万ペソをLGBTIQ+支援団体に寄付する「#1Beso1Donación」キャンペーンをしたりしてきたブランドだけあって、対応が早いわー。最近はこの日本でさえ、プライド月間にレインボーカラーのグッズを出してみたり、SNSで多様性に賛成してみせたりする企業が増えたけど、こういうときにこれだけ素早く態度表明してくれるところが何社あるだろうかと思っちゃったわ(プライド月間にはしゃぐわりに、杉田水脈や荒井(元)秘書官が何を言おうと知らんぷりな企業のみなさん、聞いてますかー?)。

……とは言っても、ドリトスも昔からLGBTQ+フレンドリーだったわけじゃなくて、2009年頃まではCMでゲイネスを「面白おかしいネタ」として使っていた黒歴史があったりするぐらいなので、要するに方針さえ変わればどんな企業でもこれぐらい変化できるものなのかも。今から14年後に、日本にもこれぐらい即座に「ホモフォビア許さん」という姿勢が示せるブランドが増えて……たら、いいなあ……(弱気)。

「息子があなたに会えて幸せ」母(ロシア人)が息子の彼氏(メキシコ人)に感謝のメッセージ

ロシアの地図と旗

www.univision.com

あるメキシコ人の男性TikTokユーザが、体調を崩した恋人のロシア人男性を甘やかしてあげたところ、恋人ばかりか義母にも感謝されたと言っています。「ロシア/ロシア人はホモフォビック」というステレオタイプはよくないな、とつくづく思わされる、スウィートな動画でした。

@urielandriano Mi güerito bonito 💖🥹 #foryoupage #foryou #gay #couplegoals #lgbt #fyp #fypシ #viral ♬ sonido original - Uriel Andriano

この動画の舞台はメキシコ。メキシコ人ミュージシャンでダンサーのUriel Andrianoさんは、同国にやってきていたロシア人のボーイフレンドがアレルギーで体調を崩したため、薬や食べ物、花束を差し入れてあげたんだそうです。ボーイフレンドはUrielさんを抱きしめて喜んだばかりか、「ロシアでは誰もこんな親切なことはしてくれない、ゲイに対してはなおさらだ」と言って泣き出してしまったとのこと。そればかりか、のちにボーイフレンドのお母さんからロシア語でメッセージが届き、訳すと「愛情と心遣いを本当にありがとう、私の息子があなたと出会えてとても幸せです」という意味だったんだそうです。

上の方でも書きましたが、いくらプーチンの政策がアンチLGBTQ+だからって、国全体がそうだと勘違いしたらいけませんね。人間にはこういうスウィートネスってものがあって、それを大事にすることが逆境突破と共存の道なんだろうなとしみじみ思いましたよ(たぶんきのう映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』*1を見たせいもあるんだけど)。

*1:ものすごくよかった。ミシェル・ヨーもステファニー・キーもキー・ホイ・クァンもすばらしかったけれど、あたしのイチオシはジェイミー・リー・カーティスですね!!

73歳がゲイとしてカミングアウト 家族は支持せず、でも隣人がプライド・フラッグで応援

複数のプライド・フラッグ

plumasatomicas.com

あるTikTokユーザーが投稿した、男性が自宅の庭に大量のレインボーフラッグを飾っているところを撮った動画がネットで話題を呼び、300万回以上再生されています。たいへん短い動画(そりゃそうだ、TikTokだもん)内のキャプションを全部訳すと、こんな感じです。

  • 去年、わたしのパパのご近所さんが、73歳で同性愛者としてカミングアウトしました!
  • その人の家族は、彼をサポートしませんでした。
  • それでわたしのパパが、彼に「一人じゃないよ」と示すために、こうしました。

それでは動画をぜひどうぞ。

こんなご近所さんがいたら泣くわ絶対。LGBTQ+ピープルにとって、家族からの拒絶や否認は日常茶飯事だもん。このお父さんは73歳の隣人だけでなく、動画を見た世界中の性的マイノリティの心をあたためたと思うわー。

『侍女の物語』など21冊が学校図書館の禁書に 米バージニア州

The Handmaid's Tale and The Testaments Box Set


bookstr.com

米国バージニア州マディソン郡の教育委員会が、地元の公立ハイスクールの図書館から21冊の本を排除すると発表。ネットユーザーは疑問や批判を表明し、3冊禁書にされたティーヴン・キングも痛快な意見をツイート。そして地元の公立図書館は、禁書にされた21冊すべてが読めることを保障しています。

この21冊にどんな本が含まれるのかについては、Bookstrなどで紹介されています。(邦訳があるものは)邦題に置き換えると、以下の通り。

  • 『侍女の物語』(マーガレット アトウッド著)
  • 『はみだしインディアンのホントにホントの物語』(シャーマン・アレクシー著)
  • 『ウォールフラワー』(スティーヴン・チョボウスキー著)
  • 『アンラヴェルミー ほんとうのわたし』シリーズ(計6冊)(タヘラ・マフィ著)
  • 『タール・ベイビー』(トニ・モリスン著)
  • 『青い眼がほしい』(トニ・モリスン著)
  • 『スーラ』(トニ・モリスン著)
  • 『ラヴ』(トニ・モリスン著)
  • 『肉体泥棒の罠』(アン・ライス著)
  • 『夜明けのヴァンパイア』 (アン・ライス著)
  • 『殺人容疑』(デイヴィッド・グターソン著)
  • Empire of Storms (Throne of Glass, 5) by Sarah J. Maas
  • 『骨の袋』(スティーヴン・キング著)
  • 『11/22/63』(スティーヴン・キング著)
  • 『IT』(スティーヴン・キング著)
  • Furyborn by Claire Legrand

このリストについての、Redditでの反応はこんな。

  • 『侍女の物語』について
    • 「女性たちに終盤がどうなるか知ってほしくないんだ」
    • 「中絶を禁止してから1年もしないうちに侍女の物語を禁書にするのはちょっと不吉すぎ」
  • トニ・モリスンについて
    • 「彼らは本当にトニ・モリスンが嫌いだよね……」
      • 「米国における黒人の存在を抹消することを、隠そうとすらしてない」
  • 『夜明けのヴァンパイア』について
    • 「ホラー小説というよりホモエロティックなロマンス小説だから、保守派が反対するのはわかる。保守派の中にこの本を読んだ人がいたということがちょっと衝撃」
      • 「でも、それならなんでライスの他の本は禁止しないんだろう? 全部そんななのに」
  • 『11/22/63』について
    • 「子供たちが『米国の歴史の流れを変えることができる』」と考えるんじゃないかと心配してるってこと?」
    • 「60年代はアメリカ全体にとって完璧な時代ではなかったと言われることが、MAGAの信念にそぐわないんだ。彼らは世の中を60年代に戻したがってるんだから」
  • 『IT』について
    • 「ゲイキャラが〇〇〇(ネタバレ防止のため訳者の一存で伏せます)、人種差別的な罵り言葉が大量に出てきて、家庭内での実にひどい虐待があって、子供の〇〇〇〇(同)があるんだから、彼ら(保守派)の趣味にはもろに合っているのでは?」
      • 「共和党員たちによれば、子供との〇〇〇〇(同)は家庭の秘密か、教会のバックルームか、ボーイスカウトのミーティングの後のためにとっておくものなんだ」
      • 「ゲイキャラが〇〇(同)ことが、たいへんな悪として描かれてるからだよ」

そして、3冊禁止されたスティーヴン・キングの意見はこちら。

ざっくり訳:

すごくまっとうな意見だと思います。そして実際、マディソン郡公立図書館 (Madison County Public Library)は禁書リストの中で唯一蔵書になかったFurybornを新たに発注してまで、21冊すべてを読めるようにしているとのこと。さらに言うと、ブルックリン公立図書館(Brooklyn Public Library)ではこうした禁書の動きに対抗する"Books Unbanned"という取り組みがなされていて、米国内の13歳から21歳までのすべての人が、他の場所では排除されてしまった本の電子書籍やオーディオブックを同図書館から借りることができるんだそうです。知る自由を保障する仕事っていうのはこうでなくちゃいけないし、そうでなくなったら本当に国全体がギレアデ共和国一直線だと思います。

最後に余談だけど、「キングがいいこと言ってる」と上記ツイートをうちの彼女に教えたときの反応はこんなでした。

LINEスクリーンショット

これはそういう本をちゃんと収蔵して貸し出してた小学校の図書館が偉いと思うの。図書館たるもの、今後もこうであり続けてほしい。

「ここから立ち去れ」女がゲイカップルを聖水で攻撃 メキシコ・トルカ

十字架

celebrity.land

メキシコシティの約60km西にある都市、トルカ(Toluca)で、教会前でハグしていたゲイカップルが知らない女に聖水をかけられ、「警察を呼ぶ」などと脅されたというニュース。動画はこちら。

@leoperovirgo

Que dificil entender que alguien puede tratarte asi por el hecho de de amar libremente 💔 los buenos somos más; Gracias a las autoridades y gente de la iglesia que decidieron actuar con amor y congruencia 💖🏳️‍🌈

♬ sonido original - Leonardo Hernández

この動画はゲイカップルのひとり、Leonardo Hernándezさんが撮ったもの。Leonardoさんによると、彼が恋人のThomasさんと教会の外にある階段に座ってハグをしていたところ、動画の女に「今すぐ立ち去れ!」と言われて、聖水とみられる水をスプレーでぶっかけられたんだそうです。動画はそのスプレーぶっかけシーンから始まっていて、直後の会話をざっくり訳すとこんな感じ。


女(スプレーをかけ終わった後)「すぐに警察を呼ぶからね!」

ゲイ男性のひとり(どちらかは不明)「ぼくは神とともにあります」

女「いーや、そうは見えませんね」

ゲイ男性のひとり(どちらかは不明)「だから(神とともにあるから)こそ、ここにいるんですが」

通行人(女に)「この人たちは何もしてませんよ、なーんにも。そこで座ってるだけですよ」

Leonardoさん「『悪い』っていうのはものを盗むこと。『悪い』とは、憎むことですよセニョーラ」

セニョーラはこう言われてもまったく態度を変えず、バッグから携帯電話を取り出して警察らしきところに電話をかけ始めます。が、電話の相手からは思ったような反応が引き出せなかったらしく、彼女は途中から話を「『私有地』への不法侵入」にすりかえたり、移民差別を追加したりまでして、なんとか排除に加担させようとしています。かいつまんで訳してみるとこんな。


女(電話の向こうの人物に)「立ち去ろうとしないんですよ……神の家の前にいたがってるんです……なぜ?……ここは私有地ですよ……ここは主の家があるところで、彼らにいてほしくないんです……それじゃあ、あの人たちがここに不道徳な行為をしに入り込んでもいいっていうんですか?……悪魔の所業ですよ……メキシコ人には見えないからきっと移民です、ここの人じゃありません。ここの若者たちに不道徳を教えるために、とこかの堕落した国から来てるんです」

ずいぶんひどいことを言っていますが、その後Leonardoさんが電話口に出ていきさつを説明し、電話の向こうの人物(Leonardoさんによれば警察官だそうです)はあっさりと「それは差別ですね」と応えています。そんなわけで女が狙っていたような「官憲の力を借りてゲイカップルを追い出す」という展開にはまったくならなかったんですが、それにしても聖水とはねえ。しかも、よく見たら十字を切りながらぶっかけてるし。勘弁してくれ。

偶然にもあたしゃ、このニュースを目にしたときスティーヴン・キングの分厚い吸血鬼小説を読んでたところだったんで、「それじゃあ何かい、あたしらは〇ー〇・〇ー〇〇*1なみのヴィランだってわけかい」とのけぞりましたよ。「そのうち『浄化の炎』とか称してゲイタウンを焼き払おうとするんじゃないの、この女」とも思いました。いや、世の中にはまじでレインボーフラッグやゲイバーに放火する人もたくさんいるから、洒落にならないんですよこういうの。通行人が止めに入ってくれたり、警察がすぐに差別だと判断してくれたりして本当によかった、社会にはこういうストッパーが絶対に必要。

*1:ネタバレ平気な方はここをクリック。こんなんと同列扱いにされるだなんて、冗談じゃない。

お腹の子を「虹の赤ちゃん("bebé arcoíris")」と呼んだ女優に批判、でもその語の意味は…… チリ

Mi Bebé Arcoíris (Spanish Edition)

www.milenio.com

チリ人の俳優で妊娠中のパトリシア・ロペス(Patricia López)がInstagramでおなかの子を"bebé arcoíris"(虹の赤ちゃん)と呼び、「まだ生まれてもいないのにゲイ扱いか」と非難されるはめになったというニュース。実はその語はゲイとはまったく関係なく、「上の子を流産や死産、乳幼児期の病気・事故などで失った後に生まれた赤ちゃん」の意なのに、とんだとばっちり。

なおこの"bebé arcoíris"、別に特殊なジャーゴンではなく、本や音楽のタイトルなどにも使われている言葉のようです。

それを知らなかった人が、「虹=レインボーフラッグ=ゲイ!」と思い込んで暴走したってわけ。

パトリシア・ロペスは"bebé arcoíris"の意味を説明し、フォロワーや一般ユーザーに「誰かを攻撃する前に情報を得てほしい」と伝えて、ファンから大いに支持されたとのこと。説明に使われた以下のInstagramポストでは、虹のイラストに「虹の赤ちゃん 雨の後に太陽は上る」という文言を添えたものを見ることができます。

レインボーフラッグの意味が周知されてきたのはいいことだけれど、こういう「虹関係のものを見ただけでヘイトをぶちまけ始める人」が次々現れる(前にもこういう例がありましたよね:Twitterユーザ、虹色のおもちゃが「子供にゲイを教え込む」と非難 - 石壁に百合の花咲く)のは頭が痛いわ。偏見の強さと認知能力の低さには相関があるという説からすれば不思議ではないことなのかもしれないけど、もうちょっとなんとかならないものかしら。

ブラック・アイド・ピーズ、虹色のアームバンドをつけてポーランド国営放送に出演

Monkey Business

www.thepinknews.com

米ポップバンドのブラック・アイド・ピーズ(The Black Eyed Peas)が、同国の国営放送の大晦日コンサート"New Year's Eve of Dreams"に、レインボーカラーのアームバンドをつけてライブ出演。もちろんこれは反LGBTQ+政策をとる同国政府への批判で、右派は「夢の大晦日ではなく倒錯の大晦日だ」などと言って怒ってるそうです。やるなあブラック・アイド・ピーズ。

ゲイで移民の下院議員、聖書ではなくスーパーマンのコミックで宣誓へ 米国

スーパーマン

www.advocate.com

カリフォルニア州から連邦下院議員に選出されたロバート・フリオ・ガルシア(Robert Julio Garcia)氏が、議員就任時の宣誓で、聖書ではなくスーパーマンのコミックブックなどを使うつもりだとTwitterで発表しました。氏は5歳時にペルーから米国に来て市民権をとった移民で、オープンリー・ゲイでもあります。

当該ツイートはこちら。

つまり、

  1. 新型コロナウイルスで亡くなった両親の写真
  2. 市民権の証明書
  3. スーパーマンのコミックブック(注:もともとコミックブック好きな人であるらしい

の3つを宣誓に使うよと彼は言っているわけ。宗教保守への痛烈な皮肉になってるし、そもそも政教分離を定めた合衆国憲法に対する誓いに聖書を使えと強制する方がおかしいので、こういうのはどんどんやってほしいと思います。

性的少数者狙った銃乱射予告で男を逮捕 米フロリダ州

銃器

abcnews.go.com

米国フロリダ州の男が、LGBTQに対する集団射殺予告をした疑いでFBIに逮捕されたというニュース。男はDiscordにライフルの写真を載せてフロリダ州立大学の住所、予告日時、LGBTQの人々への中傷、100人以上が「死ぬだろう」という文言などを書き込んだとして起訴されているそうです。

逮捕されたショーン・マイケル・アルバート(Sean Michael Albert)容疑者はフロリダ州立大の学生で、FBIの調べに対し、自分の投稿は「皮肉」、「風刺」、「冗談」のつもりだったと話したとのこと。一方、同容疑者のルームメイトやアパートメントの管理人、フロリダ州立大のセキュリティ管理者は、容疑者には「暴力の前歴と厄介な行動のパターン」があったと言っているとの由。

ハインリッヒの法則じゃないけど、「パルス」や「Club Q」での乱射事件の背景ではこういう事件が山ほど起こってるんだろうなあ。何度も実際に虐殺されているコミュニティへの殺害予告をネットでばらまくのはそれだけでれっきとした加害行為なので、連邦法できっちり裁かれてほしいです。

「ペドフィリア描く」とデマ流され図書館から撤去された本が売上げ2倍に 米国

Lawn Boy

www.infobae.com

ゲイ少年が主人公の小説“Lawn boy”が、「小児性愛を描いている」というデマを流され、2021年でもっとも図書館からの撤去を要求された本に。著者のもとにはデマを真に受けた人からの脅迫や殺害予告が押し寄せました。現在では撤去を実施した図書館の半数以上がこの本を再び棚に戻し、同書の売り上げは急増しているとのこと。

デマが流されて騒動が拡大していった過程をまとめると、こんな感じです。

  1. テキサス州の学校区(教育委員会)の会合で、Burkmanという女性が、同書の中の10歳の少年同士が性器に触り合う部分を問題視。さらに、「小学4年同士の性行為を規範化するのは誰か? 教えてあげましょう、ペドファイルです」と発言。この発言がネットで広まる
  2. その数日後、上記発言に刺激されたバージニア州の母親Stacy Langtonが、やはり学校区の会合で、「"Lawn boy"は成人男性と10歳の少年との性的行為を描写している」と虚偽の主張をする。これもネットで広まる
  3. Fox Newsの番組で、タッカー・カールソンがLangtonの主張を取り上げ、同小説には「大人の男と少年のセックスが生々しく描かれている」だの、こういう描写をするのは「子供たちを性的に搾取するための準備」だのという大嘘を吹聴
  4. "Lawn boy"の著者Jonathan Evisonのもとに、殺害予告や、彼を「小児性愛者」として非難するメッセージ、彼の娘たちを性的暴行するという脅迫などが殺到
  5. "Lawn Boy"、2022年でもっとも図書館から撤去された本に

ひっどいな。

とりあえずワシントンポストの調査では、この本を撤去した図書館の63%がその後、再び棚に戻しているそうです。また、同書のペーパーバックの売り上げは初版発行時(2018年)から100%upしているとのこと。でも同性愛を意図的にペドフィリアと混同して叩くという古典的な手法がいまだにこれだけの被害を生んでるという事態には頭が痛くなるし、子供に対する性加害を問題視してるはずの人たちが著者への攻撃としてレイプ予告を選ぶというなりふり構わなさにはさらにぞっとさせられます。結局、LGBTQ+フレンドリーな本とその著者を攻撃できればなんでもいいんだろうな、この人たち。本当に小児性虐待に反対しているのなら、書籍の中のありもしない描写に噛みつく前に、児童婚を禁止する法案を潰したり、下院議長(当時)が複数の少年に手を出して有罪判決を受けたり、はたまたその有罪判決を受けた下院議長(当時)を積極的に擁護したりしている政党をもっとガンガンに非難してるはずだもんな、「共和党」っていうんですけど。

メキシコ上院、LGBT+カップルに平等な権利を与える社会保障法案可決

www.homosensual.com

2022年12月6日、メキシコ上院が、すべてのLGBT+カップル(既婚・同棲を問わず)に異性愛者カップルと同じ社会保障の権利を与える法案を全会一致で可決。これにより、LGBT+カップルも(しつこいようですが既婚・同棲を問わず)平等に保険や遺族年金の給付を受けられるようになるとの由。

上院のTwitterの公式アカウントには可決の様子を伝える動画や、この可決で何が変わるかを説明するかわいらしいイラストが掲載されています。同じ議会でも、日本とはだいぶ違うなー……。


同性婚カップルは異性婚カップルよりストレス対処がうまい(米研究)

plazadiversa.com

テキサス大学オースティン校のYiwen Wang博士による研究で、同性同士で結婚しているカップルは異性婚カップルよりも協力的で、2者間のストレスに対処する能力が高いことが示されたとのこと。

論文はこちら。

以下、上記論文のアブストラクトから抜粋して和訳。

結果として、女性と結婚している女性は、男性と結婚している女性と比べ、ポジティブなサポートをより多く、ネガティブなサポートをより少なく受ける傾向にあることが示された。男性も女性も、同性婚している人たちは、異性婚している人たちより協調的にストレスに対処する傾向にある。

Results suggest that women married to women are more likely to receive positive support and less likely to receive negative support compared to women married to men. Both men and women in same-sex marriages are more likely to cope with stress collaboratively than their counterparts in different-sex marriages.

そういや先行研究でも、同性カップルは異性婚カップルよりポジティブな方法(褒め言葉など)で意見の相違に対処する傾向にあると言われてましたっけ。女が好きな女でよかったわ、あたし。

「おばさんは間違ってる」:同性婚への反対求め泣き出した米下院議員にゲイの甥からアンサー動画

2022年12月8日、米下院が同性婚や異人種間の結婚を立法で合法化する「結婚尊重法」を可決。ネットでは、このときアンチ同性婚のVicky Hartzler下院議員(共和党)が泣きながら同法に反対するよう求めたスピーチの動画が話題になっています。泣くほど嫌か、平等が。おまけに同議員にはゲイの甥御さんがいて、その甥御さんが発表したアンサー動画がまたおもしろいの。

詳細は以下。

www.rawstory.com

まず、結婚尊重法が成立すると何がどう変わるかについては、BBCニュースの日本語報道がわかりやすいと思います。以下、引用。

同法案は、同性婚や異人種間の結婚など含み、すべての州で合法に行われたあらゆる結婚について、連邦政府がその有効性を認めるよう定めた。法案はさらに、他の州で合法的に行われた結婚の有効性を、他の州も認めるよう義務付けた。

同性婚や異人種同士の結婚が連邦法で合法化されることによって、仮に最高裁が今後、それと異なる判決を下したとしても、当事者は自分たちの権利を争うことができるようになる。

そして、このような変化が泣くほど嫌だったらしいVicky Hartzler議員がおこなったスピーチというのがこちらです。

Hartzler議員はこのスピーチで、同法案は「伝統的な家族を崩壊させ」、「信仰の声を黙らせ、神によって織りなされたわが国のいしずえを永遠に破滅させる」ものであるから勇気を出して反対側に回ってほしいと呼びかけ、感極まったのか途中で涙を流しています。でも実際のところ、「勇気を出して」も何も、お仲間のはずの共和党議員でさえ39人も賛成して可決されたんですけどね、この法案。

上記のスピーチに対するReddit上の反応をいくつか拾って訳してみます。

本当に、誰かを抑圧できないからって理由で泣いてる。

憲法の話をしてるのに米国はキリスト教国だと思ってるんだ、合衆国憲法修正第1条は政教分離に関するものだってのに。

「特権に慣れている人には、平等は(自分に対する)抑圧みたいに見えるものだ」


ここまでだけでも十分興味深いのですが、なんと、このHartzler議員の甥のAndrew Hartzlerさんはゲイなんだそうで。以下、そのAndrewさんが、同議員のスピーチに対するリアクションとして発表した動画です(全文文字起こしがついているので、リスニングが苦手な方でもわかりやすいと思います)。

Raw Storyが詳しく報じてますが、このAndrewさん、「同性愛は校則違反で退学の対象」というめちゃめちゃ保守的なキリスト教系大学(親がそこしか学費を出してくれなかったんだそうです)で1年次に退学寸前になり、2年次に自死未遂した経験があるんだそうです。Vicky Hartzler下院議員に対してはカミングアウト済で、にもかかわらず議会であんなスピーチをされたとのことで、「ヴィッキーおばさんは間違ってます」と彼は上記動画で話しています。以下、動画からいくらか引用してざっくり訳。

ヴィッキーおばさんは間違ってます。宗教系の大学みたいな宗教的機関は、黙らされたりしてません。宗教による免責でたくさんのLGBTQ生徒たちを差別する権力を、合衆国政府から与えられてます。それでいて連邦政府の資金までもらってます。

Aunt Vicky that's just not right. Institutions of faith like religious universities are not being silenced. They're being empowered by the U.S. government to discriminate against tens of thousands of LGBTQ students because of religious exemptions but they still receive federal funding.

おばさんは自分の宗教的信念を誰かに押し付けたいと思ってて、それをする権力を持ってないために、黙らされていると感じていると言った方が近いのでは。でも、別に黙らされてなんかいません。おばさんは単にこれからぼくたちみんなと共存することを学ばなきゃいけなくなるってだけで、それはきっとそう難しくないことだとぼくは思ってます。

It's more like you want the power to force your religious beliefs onto everyone else, and because you don't have that power you feel like you're being silenced, but you're not. You're just going to have to learn to coexist with all of us. And I'm sure it's not that hard.

届くといいよね、この言葉。

タコス店でホモフォビックな暴力により骨折か メキシコ・メキシコシティ

メキシコシティのレストランでゲイカップルが約10人の集団から暴力をふるわれ、ひとりが足を骨折したとして、加害者発見のための協力を要請する動画が発表されました。

詳細は以下。

escandala.com

動画はこちら。

動画の中では、ひとりに男性がうつぶせに地面に倒れていて、カメラが襲撃者のひとりとされる人物を追っているのが見てとれます。動画内の音声はこんな風。

  • 「足を折られた! 足を折られた!」
  • 「何があったの、ちょっと」
  • 「(加害者の)写真を撮って!」
  • 「(アップになった男性に向かって)お前だ、この野郎。お前だバカ」

Escandalaによると、この事件は2022年11月12日、タコスレストラン「ラ・カサ・デ・パストル」(“La Casa del Pastor”)のマサリク(Masaryk)店で起こったとのこと。上記ツイートの文面を訳すとこんな感じです。

「加害者を特定するため、拡散に至急協力してください。友達がゆうべ、@LaCasadelPastorマサリク店で、ゲイだからという理由でバカどもに10人がかりで殴られて足の骨を折ったんです #StopHomofobia」

Ayúdenme a difundir urgentemente para identificar a los agresores. Anoche en @LaCasadelPastor Masaryk entre 10 weyes le rompieron el pie a golpes a un amigo por ser gay #StopHomofobia

メキシコシティ差別予防・除去委員会(Consejo para Prevenir y Eliminar la Discriminación de la Ciudad de México)は、この事件についての調査を実施すると言っているとのこと。

ひょっとしてつい先日のメキシコ全土同性婚法制化のニュースで「そうかー、メキシコはLGBT+に『理解がある』んだー」と思っちゃった人がいるかもしれませんが、それ、違いますからね。メキシコのトランスフォビアやホモフォビアはまだまだ強いし、それらによる暴力はずっと続いてますからね。ポイントは、それでも日本の政府や自治体とは違って、「『多数派の理解が得られていないから』ダメ」みたいな頓珍漢な寝言によって人権保証がネグレクトされなかったということ。たとえばメキシコシティで同性婚法案に反対する右派政党が他国みたいに住民投票に持ち込もうとしたときには、権利の承認と付与を協議にかけるのは「きわめて非民主的」だという反論がちゃんと議会でなされ、結果として住民投票は実現せず、カリフォルニア州みたいに数の力でひっくり返されずに済んだってことがあったのよ。メキシコにあるのは「(LGBT+ライツについてあまり考えたことのない日本人がふわっと想像するような)理解」というより「人権思想」だとあたしゃ思うよ。